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職務質問をうまくかわせ。西丹沢自然教室から祠尾根を進め。

西丹沢自然教室(祠裏) 〜 板小屋沢ノ頭 〜 石棚山稜 〜 檜洞丸 〜 西丹沢自然教室

2009年12月12日(土)、天気:晴れ

行動時間 8:20〜16:30( 8h 10m)

探検メンバー : キリヤマ隊長、アンヌ隊員

 

今回の探検は、祠尾根(キリヤマ命名)だ。

 このコースは、探検家の間では有名なコース。

先人の功績に敬意を払いつつも、大胆に登っていく。

しかしその探検は、登山道入口から困難が待ち受けていた。

我が隊は無事に板小屋沢ノ頭にたどり着けるのか。

いくぞ、マイナールート探検隊。

祠の裏に入れ。見つかるな。

マイナー探検1号を西丹沢自然教室の

駐車場に止める。

今日の探検は、西丹沢自然教室の正面にある

祠の裏から尾根を進み、板小屋沢ノ頭に

向かう。

自然教室の前に来ると、職員の人に登山届を出すように言われる。

「今日は、どちらまで行かれるのですか」

「石棚山から檜洞丸に行きます」

「というと、この先の箒沢橋からですね」

ドキ!、すぐそこの祠からとは言いにくい)

「ええ、まぁ…」と、答える。なんだか歯切れが悪い。

登山届を書くアンヌ隊員。しかし、板小屋沢ノ頭までの道は

なんと書いていいやら。

職員の人が、登山道の危険なところや、最近の事故について

丁寧に教えてくれる。とても親切な方だ。

祠の前まで来た。(08:20)

ここから登っていくのを職員の人が見たら

職員の立場上、なにか言わなければならないはず。

そうなると、少々やっかいだ。

それなら、ここから登ることをきちんと説明すればいいのだが、

それも迷惑だろう。

親切な職員さんに知られないように登りたい。

そのほうがお互いのためだ。しばらく、付近をぶらぶらして、

誰もいなくなるのを待つことにする。

待つこと、数分。よしよし、誰もいなくなった。

そぉっと祠のそばに近づく。(別にそぉっとしなくてもいいのだが)

よし、いまだ。

いっきに登れ。うしろを見るなー!

走れー!といったが、さすがに走れない。

とにかく急いで登る。

切れのいい明確な尾根を

急ぎ足で進む。

だいぶ道路から離れてきた。

ふぅ、もう大丈夫。職員の人に見られずにすんだ。

ここから先は、いつものペースで登ろう。

 

少し先から、尾根は植林地帯を進むようになる。

やがて傾斜がきつくなってくる。

尾根の上は落ち葉がなく、

まるで道がついているように見える。

振り返ると大室山がよく見える。

この日は、何度も振り返っては大室山を眺めた。

衣服の調整で止まる。

位置を確認。

よし、これでいい。

満腹を確認。

よし、これでいい。

樹木の間を縫うように、尾根をつめていく。

ごつごつとした、荒々しい男性的な尾根だ。

このような尾根は登る速度が遅くなる。

立ち木が尾根をふさいでいるところを

斜面側に巻きながら越えていく。

尾根は細くなったり、平坦になったりを繰り返す。

傾斜がきついので、両手を使って登っていく。

今日はストックの出番がまったくない。

登り始めて約1時間30分。

苔むした岩場に出る。(09:55)

苔というには、あまりにモワっとしている。

さわるとフカフカした感触、

苔玉みたいだ。

さらに細い尾根を登っていくと、

やがて尾根が無くなっている。

この先からは、目の前に見える稜線に向かって

斜面をフリージグザグで登る。

だいぶ登ってきた。稜線が近づいてくる。

振り返ってみると、尾根がはっきりしていないので

登ってきた方向もよくわからなくなっている。

この尾根は、下りには使えない。

このとき、わたしはそう確信した。

稜線に到着。登り始めて約2時間。(10:34)

ここが板小屋沢ノ頭の山頂のはずだ。

稜線を右方向に進んでいく。

 

まだ新しいロープが張ってある。

ここがどうやら登山道の出合だ。

ロープを越えて振り返る。

「これより先、登山道ではありません」

の奥から来た事になる。

 

少し登山道を下っていくと。

板小屋沢ノ頭、道しるべがある。

よし、祠尾根(キリヤマ勝手に命名)を攻略した。

次にテシロノ頭に向かう。

ここからは、石棚山稜の登山道だ。

しばらく進むと、またロープが設置されている。

このあたりは、道迷いしやすいのかもしれない。

かなりの急坂を登る。

今日のルートの標高差は1000m以上ある。

テシロノ頭を通過して、

石棚山稜に向かう。

お気に入りのポイント。

道が盛り上がっている感じが、

とてもマイルドだ。

(2007年5月撮影→)

西丹沢県民の森からの道を分けて進む。

木々が葉を落としたこの時期、

ブナの枝の間を抜けていく風が

気持ちを安らかにしてくれる。

職務質問をうまくかわせ。

突然、右斜面から人が現れた。

トランシーバーで会話をしている。

何やら重々しい雰囲気。

挨拶を交わすと、おお、袖に救助隊の文字。

松田警察署の救助隊だ。

(ねじり鉢巻き、腰にはナタ。はじめは林業の人かと思った)

 

ナマ救助隊を見るのは初めてだ。

よし、さっそく取材だ。なにかあったのですかと聞くと、

行方不明者を捜索している、とのこと。

消息を絶って一週間、同角ノ頭付近との情報だけで

捜索しているらしい。救助隊員は、険しい表情で

いかにも救助モードという感じがする。

「ところでお二人は、どちらからきたのですか」

おお、職務質問された。

「板小屋沢ノ頭のほうから来ました」

うん。待てよ。

ここに来るのに道はこれしかない。聞かなくてもわかるはず。

もしかして、何か疑われているのか。

「最近、インターネットで危ないルートが紹介されてるからねぇ」

ドキ!! やっぱり。変なところを歩いていないか疑っているんだ。

うーむ、ここはシラを切るしかない。

「ベテランの方は、すごいところを登るそうですね」

「きっと GPS を持ってらっしゃるのね」

よし、完璧なシラ切りだ。

「それでは、お気をつけて」

「ありがとうございます」

これでよし。(かなりドキドキした)

 

だけど、よくよく考えてみると、マイナールートとはいえ、

尾根を歩いただけなので、何ら悪いことをしているわけではない。

だからそんなにビビらなくてもいいのだけど、

国家権力に弱いわたしは、なんとなく緊張してしまう。

行方不明者が早く見つかることを祈りつつ、救助隊の

活動をしばらく見ていた。

さらに先に進む。

このあたりは、いつ来ても美しい。音もなく静か。

穏やかで平坦な道の両脇には、たくさんのブナ。

緑がないこの時期も、

この尾根の美しさは変わらない。

 

(2009年7月撮影 →)

石棚山の山頂を越えて進む。

登山道をはずさないように、

ロープが設置されている。

(2009年7月撮影→)

石棚山稜は、四季を通じて楽しめる尾根だ。

丹沢の美しい場所をいくつかあげよ、といわれたら

わたしは、この尾根を絶対に落とさないだろう。

シンボルツリーのカツラだ。

このカツラは、ガイドブックやブログなどで

たびたび紹介されているので、すっかり有名になった。

風景に溶け込んでいるように見える

丸太の階段がある。

作った人の配慮に感謝したい。

(2009年7月撮影 →)

わたしのお気に入りの一本。

空に向かって一直線に伸びる枝が

とてもカッコいい。

葉を落とした姿もまた、キリリとしている。

(2007年5月撮影 →)

 

この稜線には、とてもたくさんのブナがある。

丹沢でブナがきれいなところに、

塔ノ岳からの小丸、大丸稜線がある。

あそこのブナは大木が多い。

しかし、ここ石棚山稜のブナは、比較的に若木が多く、

その幹には力強いものを感じる。

ユーシンへの分岐に到着。

「玄倉へは行けません!!」

とびっくりマークで書いてある。

さらにロープをかけて、通せんぼする厳重さだ。

せっかくのベンチが、使えず苔むしている。

檜洞丸の分岐に近づくと、

眼下には、西丹沢の山々が見渡せる。

あれが権現山、そのとなりに畦ヶ丸、と

いままで登った山をひとつひとつ指差していく。

登山経験が増えると、こういった楽しみも増えてくる。

この付近は、霧で展望がきかないことが多い。

しかしこの日、空はわたしたちのために

快く晴れてくれた。

富士山と反対側には、同角ノ頭が見える。

颯爽さっそうとして孤高の風格をそなえている。

丹沢では数少ないピラミッドの山だ。

さらに進むと、やがてツツジ新道の木道を進む。

そして、檜洞丸に到着。(13:37)

山頂には、誰もいない。

静かだ。

臼ヶ岳方面に少し下ったところに、

青ヶ岳山荘がある。

ここは、蛭ヶ岳の美しいポイントでもある。

この日の蛭ヶ岳は、木々の緑が弱く、

夏のような力強さには欠けていた。

それでも端麗雄大なその姿を見ると、

わたしは深く感動する。

さて、下山はツツジ新道を行く。

いつものように、ツツジ新道のシンボルツリーの

モミの木を眺める。

またこのモミに会えてよかった。

ゴーラ沢出合に到着。

未確認物体まだあるかな。

あるある。

 

(この物体の詳細はNo28:ゴーラ沢出合にある未確認の物体を調査せよを見てほしい)

 

あとは、登山道をゆっくり歩いて、

登山道入口に到着。(16:21)

そして、マイナー探検1号に到着。

 

 

あとがき

 

2件の滑落事故:

西丹沢自然教室、職員の話によると、

最近、短い間に2件の滑落事故が石棚山付近であったそうだ。

2件とも同じ場所から登山道を外して、同じ場所で滑落。

その後、登山道を間違えないようにロープを設置したそうだ。

 

今日、板小屋沢ノ頭に向けて祠尾根を探検中に、左手に崖が見えた。

立木の中に隠れてよく見えないが、岩がむき出しになっている急な崖だ。

このとき、わたしはアンヌ隊員に「あそこから落ちたら絶対死ぬよね」

と言った。だが、後にこの言葉がとても不謹慎だったことを知る。

 

 

板小屋沢ノ頭から登山道に出合うところにロープがあった。

このロープこそ、自然教室の職員が話してくれたロープだ。

あの崖が、滑落現場だったのだ。

 

登山道を外してさまよってきた登山者が、あの崖の上に立っても

その一歩先に地面が無いことに気がつかないだろう。

言うまでもないが、急な崖ほど上からは見えない。

ましてや立木に隠れていればなおさらだ。

 

ロープの設置されたところをよくよく観察すると、

なるほど確かに迷いやすい。当時、霧が深かったことも

災いしたらしい。

2件の滑落事故では、ヘリコプターが出動したそうだ。

ヘリコプターが登山者を無事救助したのか、

それとも惜しくも収容になったのかはわからない。

 

遭難事故の80%は下山のときにおこる、と聞いたことがある。

下山時は注意したいと、しみじみ思う。

(ゴーラ沢出合付近から見る現場)

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