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権現山への管理道を見つけろ(2)

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スズメバチはいるのか

1064m地点が見える。

道はつづら折になったり、

小さな尾根を越えたりしながら、

進んでいる。

この辺りは今朝、自然教室の掲示板で見た

スズメバチのポイントだ。

少しでも羽音がしたら注意しなければならない。

 

ハチに襲われたら、あわてて動いてはいけないというが、

実際に襲われたら逃げ出してしまうだろう。

しかし、こんな山道では走ることができない。

 

ハチはすごいスピードで追いかけてくると聞いたことがある。

だんだん怖くなってきた。

 

むむ、羽音がする。

わ!、スズメバチだ。

なんだ、ハエか。

全身が耳になっているので、鳥の鳴き声や風の音といった

わずかな音にも反応してしまう。とても怖いぞ。

スズメバチの襲撃を恐れながら

ゆっくり進んでいく。

丸太がかけられているところをたくさん通過するが、

どれも年季の入った丸太なので、安心できない。

丸太橋を巻く。どの橋も簡単に巻くことができる。

ここまでは順調だったが、

谷を越えた先に道がなくなった。

よく見ると、谷の向こう側の斜面に道が付いている。

岩崎元郎氏の提唱する佐々木小次郎スタイルで

ストックを背中にしまう。

谷へゆっくり下りていく。

谷底へ着いた。

どこから登り返そうか。

少し下流から登る。

崩れた斜面を登り、再び管理道を進む。

しばらく、道なりに歩いていく。

むむ、この橋は巻くことができない。

かなり痛んでいるが大丈夫かなぁ。

薄氷を踏むように

そぉっとわたる。

前方には権現山が見える。

この後、いくつも丸太橋を巻いて進む。

どれも強度が信頼できない橋だ。

分岐に到着。

 

おそらく畦ヶ丸へのルートだろう。

ここから先は尾根道だ。

「塩が足りない、熱中警報」(ポッカ)というスポーツ飲料を

試してみる。ちょっと酸っぱい。

これはいい。無理なく塩分が採れる。

(ポッカから宣伝料はもらってないが…)

夏の水分補給にぴったりだ。気に入った。

テレビCMを制作するなら、ぜひわたしを出演させてほしい。

崩れているヤセ尾根を越え、

さらに尾根道を進むと、

権現山への分岐に到着する。

ここまでくればスズメバチ地帯を

越えただろう。ひと安心だ。

矢印の方向、山頂へ向かっていく。

分岐には、なぜかドカンがある。

権現山へしばらく進むと、崩れた尾根を通り、

その先から少しきつい坂が始まる。

人の声がするぞ

何か音がする。すわ、スズメバチか。またしても緊張する。

しばらくして、また音が聞こえる。ちがう、羽音ではない。

鳥の声か。ちがう、人の声だ。

 

ハイカーか。いや、今登っている権現山の入り口には、

立ち入り禁止の看板があるはずだ。ハイカーが登ってくるはずがない。

もしかしたら、

管理道の関係者(しかも、こわい人)かもしれない。

まずい。ここは立ち入り禁止の登山道だ。

見つかったら、

ひどく叱られるかもしれない。

今のうちに、いいわけを考えておこう。

「道に迷いました。近くに交番はありませんか」

「え?、ここは富士山ではないのですか」

「お許しください。お金ならいくらでもあります(世の中には)」

「わたしは、キリヤマです」

うーん、どれもいまいちだなぁ。

緊張しながら登ると、3人(女性2人、男性1人)のパーティが

座って談話をしている。ロープ、ハーネス、そしてカラビナ。沢屋だ。

よかった。こわい管理者ではなかった。

ホっとして女性に話しかける。

 

「沢屋さんですか。こんな山で声がするので驚きました」

「沢屋だなんて、そんなぁ。初心者ですよ」

「いえいえ、装備を見るとかなりのベテランの沢屋さんですよね」

「そういうあなたも、ベテランの方ですか」

「いえいえ、ただのモノ好きです」

「・・・・」

ここでいうモノ好きとは、かっこいい男という意味だ

と説明するべきだったのかもしれない。

 

そして、さらに登り続ける。

遠くから地鳴りがする。

ドーン、ドーン。

今日はいろいろな音が聞こえる日だ。

これは、富士山ろくの自衛隊演習の音。

初めて塔ノ岳に登ったときは、この音が雷の遠鳴りかと思った。

 

ドーン、ドドーン。

今日は派手に鳴らしているなぁ。

と思ったら、急に音がしなくなった。

おや、どうしたのだろうか。

アンヌ隊員が「もしかしたら…、今何時かしら」。

12時過ぎ。そうか。

 

今日は土曜日。まさに半ドンだ。

こうして権現山の山頂に到着。

ベンチは崩壊している。

山頂の道しるべも壊れている。

ここは放置されているのだろう。

丹沢湖が、かすんで見える。

昼食をとり、山頂を後にする。

 

「ヤマケイ アルペンガイド5 丹沢」(山と渓谷社)によると、

権現山を立ち入り禁止にしたのは

2007年に事故が発生したのが理由らしい。

たしかに、山頂直下の急坂や崩れた尾根道は、

探検初心者の我々にとって、とても危険だ。

先ほどのドカンの分岐を右折して、

穏やかな登山道を下っていく。

こんなに木々が美しい道なのに

通行できないなんてもったいない。

山頂からおよそ40分ほどで下って

一般の登山道、東海自然歩道に

出合う。

今来た道、権現山への入り口には、

探検家歓迎、と書かれた看板が立っている。

本日の探検はここまで。

ルートファインディングを堪能できた。

道しるべが新しい。このマークはなんだろうか。

(Webで調べると、東海自然歩道のロゴマークだとわかった)

山の教訓だ。

2008年7月に来たときには、この教訓はなかった。

教訓作家が次々に作品を作っているようだ。

あとは東海自然歩道を通って、

西丹沢自然教室のそばまで戻ってきた。

つり橋を越え、

マイナー探検1号に到着。

この後、大滝橋まで車で移動して、

自転車を回収した。

 

感想

・探検を終え駐車場に戻ってくると、男性から声をかけられた。shiroさんという探検家だ。

 そのときはshiroさんのことを存じ上げていなかったので、帰ってからさっそく彼のブログ

 を読んでみた。これは素晴らしい。アンヌ隊員も大絶賛だ。

  shiroさんは時間をかけて、ゆるやかに歩く。彼のブログを読むと、自然をとても愛する

 探検家だとわかる。必ずしも山頂に立つことを目的にせず、ヒルに刺されると

 「気持ちがなえてしまう」と正直に書く。そんな人間味あふれるshiroさんのブログはこちら。

 :雲のような日々 素敵な山の一日・・・夏の終わりに・・・

 

・西丹沢自然教室が、リニュアルしている。展示室が新しくなった。

丹沢の自然を紹介している。

安全に登山するためのレクチャーがされている。

イラストがとてもいい。

登山の計画を立てている男性。

アゴに手を当てて、あぐらをかいている。

左上に向かっている視線が、

真剣に考えていることをうかがわせる。

こちらは、ちょっと困っている。

いったい彼の身に何が起こったのか。

背景にある樹木は、彼の不安げな気持ちを表しているのか。

(楳図かずお氏の漫画にでてきそう…)

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