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美しくも厳しい自然の世界、同角ノ頭へ進め(2)

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いよいよ東沢乗越だ

やがて二股に分かれる。

ここはwebで見たことのある風景、左が正解だ。

上流の方は美しい樹木でおおわれている。

登り始めると乗越が見えてくる。

最後の詰め、ここはとても急坂だ。

深い谷間を登っていく。

目指す場所までもう少し。

やった。ついに到着。感動だ。

(10:32)

東沢出合から約1時間半かかった。

東沢乗越はそんなに広いところではない。

木の根元に、警告看板がある。

フォント(書体)の感じから推察するに、かなり古そうだ。

たった今来た道、小川谷のルートが危険だと警告している。

確かに危険だった。「大石山に下山しましょう」ということは

これから行く道は危険でないのか。

(そんなことはない)

木の根にあるテープにかすれた文字。

この道しるべも古そうだ。

モチコシ沢方面に踏み跡がある。

こちらは、かなりの難所と予想される。

我が隊が踏み込める地帯ではなさそうだ。

さぁ行くぞ。続いて同角山稜に向かう。

モチコシ沢方面とは反対方面に進む。

(10:39)

道はないが、なんとなく踏みアトっぽい。

テープがあるので何とか大丈夫だ。

沢が見えてきた。

同角沢だろう。

沢に降りるが、道らしきものはない。

ケルンやテーピングがある。

沢屋が登ってきたときの目印だろう。

少し下流に遺言棚がある。

遺言棚の下に行くと、同角山稜の石小屋ノ頭へ向かう道があるらしい。

今日は、巻き道を使って遺言棚の下に降りるつもりだ。

 

Webでたびたび見た、遺言棚の上部が見えてくる。

遺言棚の落ち口だ。

はい、記念撮影。(10:52)

道が見つからず、支尾根を登る

左岸(左)に踏み跡がある。

おそらく遺言棚の巻き道だろう。

しかし、上にあがってみると、道がなくなっている。

周囲はヤブだ。おかしいな、このあたりに道があるはずなのだが。

どうしても見つからない。しかも、ヤブの先が見えないので

ヘタに下りたら滑落しそうだ。

こっちもヤブだ。

わたしは道を間違うことには自信がある。

地図を正しく読めないことにも自信がある。

さらに、計算が遅い、人徳がない、常識がない、

犬によく吠えられることには誰にも負けない自信がある。

(これだけの自信をもちながら、隊長としての信頼がないのが不思議だ)

地図を確認する。この支尾根を登りつめると

同角山稜の尾根に出そうだ。

道はついていないが、ここを登っていこう。

ヤブを分けて登る。(11:07)

登山道のない支尾根を登るのは

アンヌ隊員、はじめてだ。

非常に不安な気持ちのアンヌ隊員。

そういえば、東沢出合から厳しい探検で、

今日は補給をあまりとれていない。

行けども行けども

道らしきものは見えない。

ここは、登山道ではない。

人間の営みのない世界だ。この険しい自然の営みは

我々のような小さなものが入り込むことを拒んでいる、

そんな気がする。

だいぶ登ってきた。

振り返ると東沢乗越が木立の中に見える。

山深い感じがする。

尾根沿いに白っぽく見える道のようなものがあるが、

これは白い石が細かくなったもので、道ではない。

以前、フルハシ隊員と新茅ノ沢で、

滝の巻き道を登っているとき、

ほぼ垂直なカベに行き当たり

進めず、戻れず、そして巻くことも

できなくなった。(そのときの写真→)

(2008年4月 新茅ノ沢)

同じような状況になったら、アンヌ隊員ではお手上げだ。

アンヌ隊員は、三点支持をマスターしていない。

わたしは、三点倒立をマスターしていない。

プチ峠がある。

とりあえず、ここで休憩と補給をとる。

アンヌ隊員、少し気分が悪いという。

「なにも食べる気がしないわ」

「ええ?、それは、おにぎり10個しか食べる気がしないということだろ?」

「ちがいます」

信じられない。ありえないことだ。

どうやらハンガーノック(しゃりばて)だ。

よほど体力を消耗しているのだろう。

まずいなぁ…

ここに来るまでに、もっとおにぎりタイムをとるべきだった。

何でもいいから食べた方がいいので、

水で流しこむように補給を取る。

少しあせっていたので、

ロクに休みをとらないで、再出発となった。

やはり戻ろうか。あとどのくらい登ればいいのだろう。

自然の営みの中、無事に登りきることができるよう

祈りながら進む。

よし、テーピングを見つけた。

おそらく、同角山稜から遺言棚につながる道の目印だ。

ここで、あらためて地図を確認する。

地図を見てもやはりよくわからない。

右方向には2004年の地図に書かれている

ルートがあるはずだが、道は無い。

左方向には2009年の地図に載っているルートと思われる。

テーピングがあるが、やはり道は無い。

正面を見ると、うっすらと道が付いている。

これは稜線までの道ではないだろうか。

この道で正しいと無理やり納得しようとする。

少し進むと、なだらかな斜面になり、

テーピングがある。

しかし、依然として険しい自然環境だ。

早く人間の世界に行きたい。

よしよし、踏み跡もある。

間違いなさそうだ。

ここまで来れば安心だ。

アンヌ隊員の表情に少し笑顔が戻ってくる。

ブナの巨木がある。

休むには、ちょうどいいポイントだ。

しばらく休憩すると、

アンヌ隊員の疲労が少し回復する。

進むにつれ、道が明瞭になってくる。

やがて、その先に

稜線が見えてくる。

やったぁ、到着だ。(12:02)

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