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迷ったら転進せよ、東沢乗越へ進め(2)

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次は沢を越えるぞ

沢には大きなケルンが積んである。(09:02)

おそらくこの沢を登ってきたときに

登山道を見落とさないためのケルンだろう。

ということは、きっとここが沢屋が登ってくる沢なのだろう。

この沢が小川谷廊下なのか。

うんうん、きっとそうだ。けっこう進んできたな。

*この沢は小川谷廊下ではない。この判断ミスが後で混乱を招くことになる。

「なかなか上手くできたでしょ」とケルンに石を積むアンヌ隊員。

アンヌ隊員の作品ではないが…。

ここで補給のおにぎりをとる。

さて、この沢の反対岸に道の続きがあるはずだが、

またしても道がない。

テーピングが無数にある。あれは沢屋の目印だ。

惑わされてはいけない。

少し下流を探してみる。

今度は下流方向に道はなさそうだ。

反対岸のすこし上流に、道らしき雰囲気がある。

テーピングがある。これか。

その先の倒木に、ロープがかかっている。

さらにその先に行くと、

トラロープがしめ縄のように2本の木にかかっている。

その真ん中に道らしき跡がある。

見つけたぞ、これだ。

この道は、探検としての登山をじゅうぶんに堪能できる。

少し進むと、道を通せんぼするように

ロープが張られている。

そして迂回の看板。

通せんぼの先は崩壊しているのだろか。

ここは看板に従って、斜面を登っていくことにする。

かなり急な斜面だが、

ロープがあるので問題ない。

ロープが終わり、さらに少し登ると

テーピングの先に道がある。

こっちへ進むようだ。

崖をトラバースする。

下には本線の道が見えるので、

この道が本線を大きく巻いているのがわかる。

少し進むと、本線と合流する。

このあたり土が柔らかく滑りやすい。

足が滑るぞ、気をつけろ、とアンヌ隊員に言ったが、

おそかった。

おや、テーピングだ。沢に降りるための目印だろうか。

こんなにはっきりとテーピングしてあるということは、

何か重要な目印なのかも知れない。

しかし、今日はテーピングに何度もだまされた。

きっとあのテーピングは沢屋のものだろう。

沢に降りずに、本線をまっすぐに進んでいく。

(後でわかったが、ここで間違えている)

ケルンがある。

うむ、こっちでいいようだ。

(ちがうぞ)

ここはいったいどこだ

突然、開けた河原にでる。(09:44)

ところで、これは何沢なのかな。

さっき越えたのは小川沢廊下だから、(ちがう)

これは、東沢かな。(ちがっ)

わぁ、こまった。わからないっ。

我々はいったいどこにいるのだ。

途方に暮れるキリヤマ。

両岸は険しい崖だ。

沢の向こう側に進む道が見つからない。

上流方向にも、道はなさそうだ。

おお、あれは同角ノ頭ではないか。

(ちがっ)

そこで、先ほどの沢屋のつけたテーピングの所に戻ってくる。

ここを行けば手がかりがあるかもしれない。

(それでよし)

うっすらと道がついている。

倒木の脇を降りていくと、

おお、美しいところだ。

沢に降りると、小さな堰堤がある。

この堰堤の上に道があるのかな?

(ない、堰堤の下にある)

上流を見ると広いゴーロだ。

コンパスと地図を首っ引きで見るのだが、

まだ現在地がわからない。

せめてこの沢が何沢なのかが分かれば、

何とかなるのに。

わからないから、とにかく上流方向に歩いてみよう。

道が見つかるかもしれない。

(こら、戻れ)

大きな石がごろごろしていて、歩きにくい。

石を避けて右岸(左側)を歩いてみる。

ここにも道がないが、石がないだけまだ歩きやすい。

ここに道を発見できれば、この方向で正しいことになる。

しかし、いくら進んでも道がない。

降りられなくなった。ロープを出す。

むむ、テーピング。

かつて、ここに道があったのだろうか。

さらに上流に進むと、

右岸も細くなり、またゴーロ地帯になる。

広い河原、続くゴーロ、両岸は壁のような斜面、

周囲は乾いていない地面。

これって増水時は、あたり一面が河になるってことだ。

こんなところに道があるわけない。

(早く戻れ)

遠くに2つの大きな岩が見える。

その上に背中を丸めて人が座っているのが見える。

だが、歩きながら双眼鏡で確認すると、人ではないようだ。

とにかく、あそこまで行ってみよう。

先ほど見た2つ大岩の近くにきた。

岩の上に石がある。これが人の正体だ。

天気予報によると、横浜の降水確率50%だ。

雨が降ってくる前に、なんとしても道を見つけたい。

この河原に立ってから、もう2時間近くさまよっている。

貴重な時間が血のように流れていく。

下流方向を見ると、先ほどの2つ大岩が見える。だいぶ登ってきた。

しかし、道はどこにもない。やっぱりここを進むのは間違っているのか。

あと、少し進めば何か手掛かりがある、

そんな気がずーっとしていて、ここまで来てしまったが、

この精神状態は遭難者の心理になっていることに気がついた。

正しい判断ができない精神状態だ。(11:38)

ここで、断念。アンヌ隊員に指示。

「下流方向へ転進するぞ」

「えー、それって撤退じゃないの」

「言葉をつつしみなさい。あくまで転進だ」

撤退(転進)を開始

撤退ではない。これは転進だ。我が隊に撤退はありえない。

下流に向かう。しばらくして、上流方面に灰色の雲を見る。

おそらく山の頂上は雨だろう。

我々のいるところは、すり鉢状の底面だ。

こんなとこで鉄砲水がきたら、ひとたまりもない。

まずいなこれは。あせりはじめる。

しかし、あせってまた転ぶといけないので、

アンヌ隊員には鉄砲水のことは黙っておく。

先ほどの森の登山道のあるところまで戻ってきた。

ここまでくれば大丈夫だ。

ここでいそぎの昼食をとる。

よし転進(撤退)だ。

あとは来た道を戻るだけだ。

しかし、やっぱりどうしても気になる。

まだ少し時間もあるし、雨もまだ降りそうにない。

もう一度調査をしに、沢に降りてみよう。

ここで沢登りの4人のパーティに出会う。

おお、よかった。彼らに後光がさして見える。

カラビナをいくつも腰から下げており、

かなり屈強な4人だ。

彼らからの情報で、沢の名前が判明。

なんとここは小川谷沢だ。

彼らに東沢乗越への道を聞いて、もう一度沢に下る。

しかし、目印があるわけでもなく

やはり分からない。

堰堤の下流を調べることにする。

このあたりに東沢乗越への道があるのでは。

そうこうしている間に、

周囲が急に暗くなってくる。そして大雨。

かなり強く降ってきた。

やばい、沢から離れるぞ、急げアンヌ隊員。

逃げるように森の中に戻ってくる。もうさすがに断念だ。

車に戻ろう。(13:16)

激しい雨の中を、ゴアテックスパワーで乗り切る。

しばらく戻ると、雨は降っておらず

明るくなってくる。転進は成功だ。

そして、林道まで戻ってくる。

マイナー探検1号に到着。(14:07)

感想:

●実はこの日は別なルート、県民の森〜石棚山〜檜洞丸を計画していたのだが、

 駐車場でお会いした探検家の皆さんに触発され、急きょ計画を変更したのだ。

 事前の調査、準備が不足していたことは否めない。

 ただ、戻ってきてからWebで調べると、この日の午後、檜洞丸の頂上付近は

 大雨だったらしい。いずれにせよ、転進(撤退)して正解だったようだ。

●現在地がつかめていないのに行動を続けていたが、今考えてみると危険だった。

 歩いてきた時間と地図上のコースタイムを比べれば、現在地はつかめたはず。

 そんな基本的なこともせず、うろうろして体力を激しく消耗した。

 「分からなくなったら戻れ」という山の鉄則に従って正解だった。

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