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生命について深く考察せよ。遺言棚へ向かえ

西丹沢県民の森 〜 東沢乗越(遺言棚)〜 同角ノ頭 〜

中ノ沢乗越 〜 西丹沢県民の森

2010年9月26日(日)、天気:晴れ、曇り

行動時間 8:50〜16:10( 7h 20min )

探検メンバー : キリヤマ隊長、コノハ隊員

 

今回のメンバーは、コノハ隊員だ。

コノハ隊員の案内により、遺言棚へ下降を試みる。

そして、同角沢から同角山稜への登攀ルートを探す。

コノハ隊員は、トレイルランナーだ。そこで、わたしは

彼のランニングに合わせて走るつもりで探検に臨んだ。

久しぶりの登山道。そして、ランニング。果たして、無事に

マイナー探検1号に戻ってこられるのか。

 

行くぞ、マイナールート探検隊。

仲ノ沢経路を抜けろ

西丹沢県民の森、駐車場にマイナー探検1号を止める。(08:50)

今週は、雨がたくさん降ったので、ここまで来る道路に水が流れて

川のようになっているところがあった。

 

今日は沢の増水が考えられる。危険な探検になりそうだ。

 

林道を少し歩いて、小川谷まで続く(通称)仲ノ沢経路を進む。

さぁ行くぞ、マイナールート探検隊。

この経路は、

※ 登る → 尾根 → 下る → 谷 → (※に戻る)を何度も繰り返す。

音楽的にはダルセーニョを何度も繰り返し、

最後のカデンツァは、小川谷、といったところだ。

経路の途中には、探検隊の歓迎看板があるが、

こちらには進まず、右側へ進む。

 

道はやがて、涸れ沢を越えるため

大きな谷を越える。

ここには以前、傾いた丸太橋があったのだが、

跡形もなく、無くなっている。

(2009年5月)

その先で、また谷を越える。

土砂量調査中の看板がある。

神奈川県庁と日本大学が調査をしている

らしい。

この道は、崩れていたり、岩が露出したりしているところがあり、

探検気分を堪能できる。

わたしは、何も考えずにヘロ〜っとわたった崩壊地だが、

コノハ隊員は慎重だ。

こうしていくつもの谷を越えていく。

谷から下流方向を望めば、そこは深い森。

人の世界からずっと離れた、まさに自然の世界だ。

丹沢にはこういった自然の奥深さを感じさせる

ところが数多くある。

道がとても細くなっている。

ロープが設置されているが、ちょっと怖い。

下を見ると、そこは深い谷底だ。

こうして少し広い、涸れた沢に出る。

ここは、ちょっと分かりにくいところだ。

沢を渡って、ロープの巻いてある杉の間に道がある。

次は、分岐がある。

まっすぐ行くと、崩壊地。

左折すると、崩壊地を巻くことができる。

 

巻き道には、ロープが設置してあるので

安全に登れる。

次に、斜面をトラバースして崩壊地を越える。

やがて、下に道が見えてくる。

よし、この斜面を一気に下るぞ。

おりゃー。

 

どうだ、コノハ隊員。

わたしについてこい。

よし、登山道に下りた。

このスピーディな行動に、コノハ隊員はついてこられまい。

コノハ隊員を後ろに、どんどん進んでいくと、

 

ありゃりゃ。

もっと先から楽ちんに下られるのか。

テーピングのある分岐から、

沢のほうへ下っていく。

だれが言い始めたのか、

このあたりを、ケヤキ平というらしい。

このあたりにはかつて、ワサビの田んぼがあったらしい。

その頃の名残か、今も小さな沢がサラサラと流れている。

水の流れる浅瀬で栽培する、水ワサビ(沢ワサビ)だろう。

ここから小川谷に下りるには、ちょっと急な斜面を下りる。

小川谷に下りると、沢が増水している。

流れがとても激しい。

東沢乗越へ沢をつめろ

登山靴から沢シューズに履き替え、

さぁ行くぞ。マイナールート探検隊。(10:00)

東沢は、大きな滝もなく、穏やかな流れの沢だ。

沢登りをするような沢ではない。

この沢は、沢靴でなくても岸辺を歩いて登れる。

今日は沢シューズを履いているので、

沢の中をジャブジャブ歩いていく。

沢は、木々に囲まれている。ゴツゴツとした岩もない。

山の奥深くにある、人知れず静かに流れる沢。

そんなことを感じさせる沢だ。

最初の滝、ナメ滝。今日は水量が多い。

コノハ隊員は、左側を登り始め、じっとしている。

水流の中にたたずみ、静かに流れを見つめるコノハ隊員。

その姿は、心穏やかな彼の人柄をよく表している。

こういう人と一緒に居ると、わたしの心も和やかになってくるような気がする。

いい人が隊員になってくれて、とても嬉しい。

と思っていたら、登るのをやめて別の場所から登り始めた。

あれ? もしかして黙想ではなく、登れなかっただけなのか。

コノハ隊員とは、今回で2回目の探検なので、その行動は

まだ理解できないことが多い。

しかし、わたしの気持ちはすっかり和やかになっている。

コノハ隊員に感謝だ。

さらに先に進むと、小さな滝がある。

東沢には登攀するような滝はないが、

この滝はホールドがないので、左側を巻いたほうがいい。

左側には巻き道があり、ロープ代わりの細いワイヤーがある。

滝のそばにある小さな花を、熱心に撮影するコノハ隊員。

清楚な感じのシラヒゲソウだ。

 

こんな小さな花をよく見つけられるなぁ。

花の気持ちを理解する人でないと、できないことだ。

 

滝の登攀を撮影した。水流がとても強く、見ていると

とても気持ちのいい滝だ。

 

このあとも、小さなナメ滝を登り、さらに進んでいくと、

沢は、二俣に分かれている。

 

 

二俣に分かれているところを右に進む。

ゆったりとした水の流れ。沢を横切る倒木。

周囲には苔が隙間なく生えている。

空気の中に緑の粒子が混ざっているような、

そんな感じがするところだ。

 

両岸が狭まってくる。

左岸(右側の岸)には、踏み跡がある。

すぐに滝に出合う。

3mほどの直暴の滝だ。

 

ここは左側から簡単に越えられる。

登山靴なら、右側の踏み跡をたどればいい。

滝の先で、水流がなくなる。

ここで、登山靴に履き替える。

分岐があるので、ここは左だ。

水流のなくなった沢をしばらく進んでいく。

いよいよ山奥に入ってきた感じがする。

この先で、また二俣に分かれる。

 

 

二俣は、右が東沢の本流だ。

このまま東沢を進むのかと思っていたら、

コノハ隊員が、二俣の真ん中を登り始める。

 

こんなところを登っていくのか。

よく見ると、踏み跡がある。

しかし、すぐに踏み跡は見当たらなくなる。

この道で本当にいいのか。

コノハ隊員に聞くと、

「ええ、これでいいのです」

本当かなぁ…。ちょっと不安になってくる。

すると、おお!テーピングだ。

確かにここに道がある。

そして、再び踏み跡も現れる。

すごいぞ、コノハ隊員。

その先で、また踏み跡はなくなるが、テーピングがある。

それにしても、斜面を横に進む危険な道だ。

うーむ、これでは、沢を登り詰めたほうがよかったのでは?

しかし、マイナールート探検隊としては、

道がある以上は、取材して報告する義務がある(かもしれない)。

多少無理をしても、このまま進むことにする。

危険な斜面の横越えを通過すると

やがて目の前に、東沢乗越が見えてくる。

谷を見下ろすと、そこは東沢。

やはり、ここまでの道をたどらずに、

東沢をひたすらツメたほうが安全だったようだ。

遺言棚は遺言を残す滝なのか

こうして、東沢乗越に到着。

よし、まずは最初の探検は達成できた。(11:10)

(写真奥が玄倉、右が東沢)

少し高いところから、東沢乗越を撮影。

写真では分かりづらいが、コノハ隊員の立っている左右は崖。

東沢乗越はとても狭いところだ。

ここにある警告看板の作り方が、ちょっと面白い。

板に文字を切り抜いて上からスプレーした、ステンシルという方法だ。

フォントは、切り抜いたときにバラバラにならないよう工夫されている。

短時間でたくさんの物に文字を簡単にペイントできるこの方法は、

軍事ミリタリーの物資輸送によく使われる。

 

しかし、ここにある看板は、大量に同じものを作成するわけではないので、

この方法で作成する必要はなかったはず。なぜこんなことをしたのだろうか。

こういったナゾも、探検の面白いところだ。

さらにもう一つ看板がある。前回の探検では、発見できなかった。

こちらは「以前はこういう名前でした」ということが書かれており、

ここでのコメントは控える。

さて、次は遺言棚に向かう。

まずは、同角沢への急な斜面を下る。

10分ほどで、同角沢に立つ。

ここは、流れがとても静かだ。

5分ほど沢を下ると、遺言棚の落ち口に到着する。(11:30)

ここからいったん左岸(矢印)の岸を登ってから

斜面を下り、遺言棚の下に向かう。

 

前回ここに来たときに、遺言棚への下りへの踏み跡を探したが

見つからなかった。今日は、コノハ隊員の案内で、遺言棚に向かう。

コノハ隊員の先導で、斜面を左方向に向かって

横切るように下り始める。

(同角沢を背にするように、左側に向かって下る)

やはり斜面には、踏み跡がない。

草木につかまりながら、ゆっくり下っていく。

 

 

すぐに溝のようなところになるが、

その先で、岩が露出した危険な斜面になる。

わたしは、コノハ隊員とは別のところを進んだら、

先に斜面を進んでしまった。(振り返って撮影)

お助けロープを出そうか、迷ったが

立ち木が多いので、なんとか下れる。

このあとの危険個所を通過しているときは、

撮影ができなかった。

 

斜面をどんどん降りていくと

やがて狭まった谷になる。

こうして、遺言棚の下に無事に到着。(11:50)

よし、やった。ついに遺言棚だ。

遺言棚、3段45m。

(この写真はコノハ隊員からいただいた)

コノハ隊員によると、

この滝は水量が少ない日には、涸れるらしいが、

この日は、水量が豊富だ。

 

むき出しになった岩。しぶきを上げながら落ちてくる水流。

両脇は切り立った渓谷。そして自分の立っている所は

深い谷の底。

 

見上げると、軽くめまいを感じるような

ちょっと怖いところだ。

ただ、正直に言うと、この滝は期待したほどではなかった。

おそらくこの滝の魅力は、その名前にあると思う。

ありきたりな名前の滝、たとえば同角大滝という名前の滝だったら

もっと違った感想を持ったことだろう。

 

遺言棚。

それは、「遺言」という名の滝、

そして、「死」を意識させる滝、

だからこそ、わたしは特別な感情をもって眺めてしまう。

 

この滝を訪れる人は、「死」を感じるだろう。

そして生活の中で、この滝のことを思い出して欲しい。

何かが変わるかもしれない。

 

遺言棚を眺めながら、ゆっくり昼食をとり

今度は先ほど下ってきたところを登る。

こうして、同角沢が下に見える位置まで登って来た。

このとき、一瞬だが、風が強く吹いた。

周囲の木々がいっせいに揺れ、

木々がしなり、葉が浮き上がった。

 

背筋がぞくっとした。やはりこの付近は、

深い自然の世界なのだ。

いつもの道迷いか、踏み跡を探せ

先ほど、東沢乗越から下ってきた位置より

もう少し上流にテーピングがある。(12:40)

ここから、同角山稜に向かって登っていく道があるらしい。

踏み跡はない。テーピングがあるから

このあたりだろうと、予測をつけて登っていく。

とにかく登っていけば、何か手がかりがあるだろう。

 

テーピングを頼りに登っていくやり方だと、

テーピングがなくなれば、そこは、

ただの斜面になる。

どんなにどんなに探しても、

テーピングも、道もない。

そして、自信もなくなった。

あれれ? 右か、左か、まっすぐか。

コノハ隊員は。何度かここを下ってきたことがあるそうだ。

それでも、なぜか道が見つからない。

むむ、これはどうやらキリヤマの得意技

ザ・道迷い」だ。

さすがのコノハ隊員も、

キリヤマの道迷いにはかなわないようだ。

 

こうなったら、マイナールート取材は無理だ。

ひたすら斜面を登っていくしかない。

しばらく登ると急斜面が少し和らぎ、

なだらかな斜面になってくる。

おお、テーピングだ。

かすかに道もある。よし、ルートに戻ったぞ。

これは2009年6月にアンヌ隊員と休息をとった大木だ。

記憶のあるところまで来たぞ。

あとは、踏み跡にしたがって登っていけば大丈夫だ。

やったー!!

ついに同角山稜に着いたぞ。

道迷いも克服した。感動だ。(13:20)

(写真の奥から登ってきた)

次は、同角ノ頭に向かう。

同角山稜の登山道を進む。

石小屋沢ノ頭付近までくると、

なんとヤブこぎ地帯だ。

ああ、しかもこれはアザミだ。

しっかり群生している。

 

ご存知、アザミには鋭いトゲがある。

あいたたたた。早く突破せよ〜!!

 

こうして、長い鉄のはしご、

そしてキレットの丸太橋を通過する。

ここ同角山稜は、山と高原地図で見ると、

地図の真ん中を走っている稜線だ。

ここから見える、蛭ヶ岳から塔ノ岳のラインはすばらしい。

しかし、この日は、あいにくの曇り空でよく見えなかった。

同角ノ頭で小休憩をとり、すぐに下り始める。

同角ノ頭から檜洞丸までの木道を下っていく。

前回(2010年5月 : NO60)ここに来たとき道迷いした。

しかしそのことに気がつかず、この木道を通らずに、

ツツジ新道に到着したという、不思議な体験をした。

今日はぜひ、どこで道を誤ったのかを調べたかったのだが、

その手がかりを得られないまま、木道をドンドン下っていく。

ランナーの走りに遅れるな

中ノ沢乗越に到着。(14:30)

ここから、小川谷を下っていく。本来なら、ツツジ新道を通って、

西丹沢県民の森に向かうのだが、今日はここまで時間がかかった。

時間が遅くなると、林道が危険になるので、なるべく早く戻りたい。

そこで、ショートカットとして小川谷を下る。

行くぞ、マイナールート探検隊。

下り始めは、やさしい感じの斜面だ。

すぐに石だらけの、ゴーロ歩きになる。

ここをずっと下っていく。

とても歩きにくいところだ。

 

少しでも早く、車に戻りたい。

そういったのは私だが…、

コノハ隊員、速い!!

さすがはトレイルランナーだ。

岩の上をカモシカのように、

ひょいひょいと下っていく。

わたしはといえば、牛のようにのろい。

大きな岩の上を歩くと、足首がぶれるので、

それを支える筋肉を使い、かなり疲れる。

ここまで、かなりの速度で下ってきたので、

足がガクガクだ。

(ああ、コノハ隊員、待って〜!)

真新しい倒木がある。

いったいどこから来たのだろうか。

崖から落下してきたとは思えない。

増水で流されてきたのか。

ということは、この辺りは増水すると沢床なのか。

さらに下っていくと、両岸が狭まってくる。

そろそろ休憩したいのだが、急ぎましょうといった手前、休みにくい。

 

ここで、わたしが激しく転倒する。

幸いにもケガなくすんだが、これ幸いに休憩する。

こうして、朝きた東沢の付近まで下ってくる。(15:20)

目の前の森が、仲ノ沢経路だ。

 

仲ノ沢経路も走って下る。今度は、わたしが前を走る。

先ほどのゴーロ歩きとは違い、平坦な道なので、

かなりのスピードで走れる。ほとんど全力疾走なのだが、

コノハ隊員は、ぴったりと後ろについてくる。

 

そして、途中で道を誤り、元の道に戻るときに

またコノハ隊員が先頭になる。

ひえー速い!!

これは、心臓の限界だ。

ちょっとコノハさーん。待って〜!

そこで、「写真を撮ります、ゆっくり走ってください」

と提案する。

 

よかった。これで少し休める。

こうして、隊長の威厳を保ちつつ、

どうにか林道まで戻ってくる。

こうして、明るいうちに

マイナー探検1号に到着。

今日もすばらしい探検だった。

(16:14)

ありがとう。コノハ隊員。

 

あとがき

・仲ノ沢経路は、前回通った2009年6月から様相が変わっていた。

 自然はうつり行くもの、諸行無常の響きあり。

・車に戻ってくると、ワイパーに紙が挟まっている。おお、またしてもお手紙だ。

 ユミコさん、励ましのエール、ありがとうございます。

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