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あわや滑落、アンヌ隊員は大丈夫か。マスキ嵐沢を克服せよ

西丹沢自然教室 〜 大滝橋 〜 マスキ嵐沢 〜 権現山稜線

2010年7月25日(日)、天気:晴れ

行動時間 7:40〜13:00( 5h 20min )

探検メンバー : キリヤマ隊長、アンヌ隊員

 

マスキ嵐沢は、アンヌ隊員が沢登りを始めるきっかけになった沢だ。

以前、権現山を探検したときに、マスキ嵐沢を登ってきた女性との交流で、

アンヌ隊員は、女性でも沢登りができることを知ったのだ。

 

しかし、マスキ嵐沢に登ってみると、意外にも

苦労する。危険な巻き道をいくつも越える

マスキ嵐沢でキリヤマは困難に対し、

どのように対処するのか。

そして、アンヌ隊員は無事に到達できるのか。

行くぞ、マイナールート探検隊。

探検家好みの沢、マスキ嵐沢へ

西丹沢自然教室の駐車場に

マイナー探検1号を駐車。

(7:40)

自然教室に登山届けを出しに行く。

前回に続いて、登山届の団体名に

「マイナールート探検隊」と書いたら、

アンヌ隊員に、

「恥ずかしいからやめて」

と言われてしまう。

しかたない。団体名は空欄にして、ノーマルな登山届にしよう。

 

こうして、大滝橋まで県道を歩いていく。

約30分で、大滝橋に到着。(8:20)

ここからは、林道歩きだ。

夏は日向と日影のコントラストが強い。

日向は眩しいが、日影は真っ暗。

さらに、温度のコントラストもある。

夏の日差しがとても暑いが、日影は涼しい。

 

森の中にセミの声が響いている。

周囲の至るところから聞こえてくる、セミの声。

真夏の太陽を、より強く感じさせる声だ。

こうして、最初の丸太橋を越える。

続いて、次の丸太橋を越える。

2つ目の丸太橋をわたると、長い丸太の階段がある。

この付近はいつ来ても湿っている。

崖に向かって微妙に傾いているのも怖い。

そして、3番目の橋を越える。

この沢がマスキ嵐沢だ。

橋を越えてすぐのところに

道しるべがある。(8:50)

さぁ準備ができた。(9:05)

行くぞ、マイナールート探検隊。

マスキ嵐沢は、とても人気のある沢だ。

ゴール地点の稜線まで、距離が短いので

ゆっくりと進んでいく。

沢に入って5分ほどで、最初の滝に到着。

滝といっても、水が岩の上を流れているところ、

ナメ滝だ。

この沢はナメ滝が多い。

水と戯れながら歩くことができる、ナメ滝は

とても魅力的、まさに「こたえられない」。

続いて、左上から溝の中を走るように流れる滝に出合う。

ここは、水流に沿って登る。

シャワークライミングだ。

小さな滝をいくつも越えていく。

どれも簡単に越えられるので、

安心して探検できる。

岩の上を水が勢いよく流れている。

まるで水の上を歩いているような、

そんな感じのするところだ。

 

それでは、さっそく。

うおーい。冷たい。

ウォーターベッドだ。

マスキ嵐沢は、深い谷間の中にあるのに、

とても明るい沢だ。

周囲の樹木やセミの鳴き声を楽しみながら

進んでいく。

次々に出てくる、大滝を克服せよ

沢に入って約30分、F1−2段7mが見えてくる。

(以下、滝の番号と高さは「丹沢の谷110ルート(山と渓谷社)」を参考)

F1の周囲は大きな岩で囲まれているので、

うーんと下がって撮影する。

(写真中央にいるアンヌ隊員が小さく見える)

流れの左側にある1段目の岩場(5m位かな)を登る。

垂直の壁ではなく、斜めの壁だ。

少し高度感があるが、ホールドがしっかりしている。

安心して登れると思ったが…。

しかし、上部の大岩が表面が平らなので、越えられない。

わずか1.5mほどの岩だが、ハーネスで体を確保せずに、

無理して登ると危険だ。

ここで、アンヌ隊員に無理しないで降りてくるように指示。

一歩一歩、足を下ろす場所を指示する。

こんなときのことを想定して、

 岩場ではたいていアンヌ隊員が先行だ。

この滝の巻き道は、大岩のさらに右側のガレ場だ。

ガレ場を少し登ってから、滝の落ち口付近に向かう。

F1の2段目2mは水流にそって登る。

続いて、F2-2段 6mだ。

この滝も少し斜めなので、水流に沿って登れる。

細い溝の中を落ちるように水が流れている。

 

次は、F3-2段 15m。

1段目は大きな一枚岩の滝だ。

2段目は、むむ、どうやって登るのか分からない。

ここで、ガイドブック「丹沢の谷110ルート(山と渓谷社)」の

コピーを取り出す。

 

ふむふむ。

どうやら2段目は、水流を横切り右のルートを行くらしい。

一段目は右側から登れる。

2段目は左から水流を越えて右のルートを行く。

今度は、わたしが先行する。

ここは、足下が段々になっているので

簡単に越えられる。

水流を越えてからがちょっと大変だ。

壁側の右のルートまで、わずかな距離だが

足下が滑りやすい。

ここは立ち木につかまって、クリアーする。

すぐ上に、F4-2段 9mがある。

これも大きな滝だ。

 

アンヌ隊員の危機、レスキューだ!!

この滝は、「丹沢の谷110ルート」によると、

右側にホールドがあり楽に登れる、と書いてある。

しかし、どう見ても楽なホールドではなさそうだ。

安全な登攀を考え、滝の右側にある斜面から

大きく巻くことにする。アンヌ隊員が先行だ。

 

ところが、この斜面はやわらかい土で覆われおり、

つかむところがほとんどないようだ。

数メートル登ったところで登れなくなってしまう。

 

そこで、アンヌ隊員に降りてくるように指示。

「右足を右下に、そこに岩がある」などと

指示を出すが、動くと斜面をずるっと下がってしまい、

思うように足をだせない。

ここでアンヌ隊員、あせり始める。

「落ちる!」「怖い!」と叫ぶ。

 

アンヌ隊員のすぐ下に行って「落ちないから大丈夫、安心しろ」と叫ぶ。

しかし、アンヌ隊員は恐怖で冷静に判断できなくなっているようだ。

「どうしよう、どうしよう」と言う。

 

パニック状態のアンヌ隊員。このままではいかん。

マイナールート探検隊、初めての滑落事故か。

明日の朝刊見出しは

「死の探検ごっこ、自称探検家・滑落」で決定!!

 

これはいかん。急ぎキリヤマがレスキューを開始。

この斜面は、土がやわらかく崩れやすいが、

止まらずにガンガン登ってしまえば、なんとか登れる。

わたしは、アンヌ隊員の登ったルートより少し左側を登る。

 

そして斜面の上にある立ち木にロープを結び、

アンヌ隊員の方にロープを投げおろす。

しかし、なかなかアンヌ隊員にいるところにロープをおろせない。

何度目かのチャレンジのち、アンヌ隊員の手がロープをつかむ。

よしやった。よかった。

 

ロープを頼りに登ってくるアンヌ隊員。

緊張しているのか、体の動きが鈍い。

いつもならこの程度の斜面、すいすい登ってくるはずだ。

 

ロープにつかまっていれば、絶対に落ちないから

安心して登ってくるように大声で伝える。

 

こうして無事に斜面を安全な場所まで登りきる。

よし、アンヌ隊員の救出作戦、大成功だ。

次に滝の落ち口付近に下りる。ここは垂直の壁を2mほど

降りるのでロープを出す。これで、巻き道は終了。

怪我なく、無事でよかった

滝の落ち口には、カラビナの支点がある。

(2013年追記:その後、支点はなくなっている)

このF4 は、ハーネスで確保して登るほうがよさそうだ。

我が隊の実力では、巻き道を使って正解だった。

アンヌ隊員は、自分が登れない斜面を、

わたしがスイスイと登ったのを見て、すっかり感激。

「ありがとうございました。おかげで助かりました」という。

よーし。これでキリヤマへの信頼アップだ。

ついでに男っぷりもアップ。

きっとホレ直したに違いない。

 

少し休憩して、先に進む。

先ほどのF4の上には、小さな滝がある。

これは問題なく越えられそうだ。

 

ところが。

ゴツ!痛!!

なんだ、木が飛び出しているのか。

ヘルメットをかぶっていてよかった。

悔しいので、戻って飛び出している木を撮影。

そしてそのあと、もう一度同じ木に、ゴツ!痛!!

二度も同じ木にぶつかるとは…、我ながらアホだ。

あきれるアンヌ隊員。これで信頼度が大幅にダウン。

ところが、アンヌ隊員も同じ木に、ゴツ!痛!!

次に、F5−5mが見えてくる。どうやって登ろうか。

ここでも「丹沢の谷110ルート」を取り出す。

どうやら水流に沿って登るルートらしいが、

我が隊には、とても無理だ。

滝の右側を巻くことにする。

最初の取り付きだけ、ちょっと苦労する。

小柄なアンヌ隊員には難しい。

あとはスイスイだ。

この写真を見ると、とても危険なところを

歩いているように見えるが、実際は足場があり、

ほとんど手を使わずに登れる。

こうして、滝の上に到着。

ここにも支点がある。

水流に沿って登るルートは

ハーネスで確保するようだ。

ここから先は、水量がぐっと減って

さらに明るい沢になってくる。

岩の溝に挟まっている岩石、CS(チョックストーン)だ。

もうほとんど水は流れていない。

水流がなくなると、気温がぐっと上がってくる。

周囲の地熱を肌で感じる。

分岐がある。

ここは右に進む。

 

分岐を右に進むと、F6−5mがある。

涸れた滝で、ホールドがしっかりしている。

イメージ的には、行者ヶ岳の岩場に近い。

これは難なくクリアー。

すぐ上に、F7−10m。

むむ、これは難しそうだ。

わたしが1段目まで登ってみるが

すぐに行き詰ってしまった。無理すれば登れそうだが、

後からくるアンヌ隊員には、ちょっと難しいだろう。

ここは無理をせずに巻き道を使おう。

岩場の右側に巻き道が付いている。

ここから巻くようだ。

巻き道の上部で岩が少し出ているが、

問題なくクリアー。

滝の落ち口にはロープの支点がある。

やはり、この滝はハーネスで確保するのが

普通なのだろう。無理をして登らずによかった。

ここから先は滝がない。

あとは、稜線までツメていくだけだ。

急な坂をどんどん登っていく。

沢のツメはガレ場になっていることが多いが、

ここは穏やかな谷間だ。

わずかだが、道もついているような気がする。

これは無名道か。

とてもきれいなところに出た。

稜線から小さな尾根が谷間に向かって

いくつも伸びている。

その尾根と尾根の合間に、わたしが立っている。

大きな器の底にいるようなところだ。

尾根には樹木があり、下草も生えている。

緑に包まれたこの谷間。

しばらくじっとして、この場の雰囲気を楽しむ。

さぁ稜線が見えてきた。

そんなに急坂ではない。

こうして権現山の稜線に到着。(11:40)

すごいぞ、マイナールート探検隊。

 

 

ここで、靴を履き替え、補給食を食べる。

するとハエがたくさん寄ってきて、とても困る。

そこで、さすらいの探検家、すぎ氏に教わった

ジーブリーズを顔と首に塗ってみる。

すると、虫があまり寄ってこない。

おお、すばらしい効果だ。ありがとう、すぎさん。

下山ルートは権現山の登山道を、

東海自然歩道に向かう。

 

およそ30分で、西沢との出合に到着。(12:30)

今日も、探検の成功にふさわしい青空だ。

マイナー探検1号に到着。(13:00)

すばらしい探検に祝福を。

 

 

あとがき

・危険なところは、キリヤマとアンヌ隊員のどちらが先行するか。

 我々のような夫婦の探検隊では、とても悩むところだ。

 わたしとアンヌ隊員の登攀技術は、ほぼ同じだ。しかしアンヌ隊員には、ここ一番の馬鹿力や大胆さがない。

 わたしが「えいや」っと登るようなところは、アンヌ隊員には難しい。

 やはり滝を登るときは、できるだけ安全な巻き道を使ったほうがいいだろう。

 

・マスキ嵐沢は、初心者向けの沢のはずだが、我が隊には手ごわかった。

 しかし、あれほど怖がっていたアンヌ隊員は、ノドもと過ぎればなんとやらで、

 「もう一度連れて行って」といっている。もっと大胆に登れるといいのになぁ。

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