神ノ川ヒュッテ 〜 広河原 〜 地蔵尾根 〜 地蔵平 〜 姫次 〜 神ノ川ヒュッテ | |
2010年6月6日(日)、天気:晴れ 行動時間 8:10〜16:00( 7h 50min ) 探検メンバー : キリヤマ隊長、アンヌ隊員
|
「山と高原地図」(昭文社)によれば、地蔵尾根は、 上級者向けのコースと記載されている。 よし、このコースを攻略して、初心者を卒業だ。 行くぞ、マイナールート探検隊。 (国土地理院の地図に加筆、以下同じ) |
クマがいるのか、広河原 |
||||||
神ノ川ヒュッテ付近の路上に、マイナー探検1号を止める。 今日は、車両が多い。トレイルランナーがたくさんいる。 |
||||||
さぁいつもの決めポーズだ。 行くぞ、マイナールート探検隊。(08:10) |
||||||
広河原までは、1時間の林道歩きだ。 |
||||||
途中、孫右衛門沢の滝を見て、 |
||||||
孫右衛門トンネル、小洞トンネルを越える。 |
||||||
やがて風巻ノ頭が目の前に大きく見えてくる。 樹木に覆われたその姿は、とても貫禄がある。 |
||||||
林道の下には、神ノ川が大きく流れている。 昨年末は、緑がほとんどなかった。 (2009年12月末のこの場所→) |
||||||
すっかり葉を落として、 ホウキのようだった木々に 今日は葉が生い茂っている。 (2009年12月末のこの場所→) |
||||||
この林道は犬越路のトンネルまで続いている。 緑に囲まれたこの道を歩くだけでも、 気持ちのいいハイキングになるだろう。 |
||||||
風巻ノ頭、袖平山を見ながら、ずっと林道を進んでいくと、 立派な鉄橋、ヒワタ沢橋を渡る。 |
||||||
このあたりで、地蔵尾根が一望できる。 源造尾根と垂直に並んでいる尾根だ。 |
||||||
やがて広河原への降り口が見えてくる。(9:00) |
||||||
広河原の降り口には、看板が設置されている。 前回(2009年12月)に来たときにはこの看板はなかった。 |
||||||
広河原の原生林、と題した説明文だ。 いろいろと書いてあるが、要約すると、 昭和40年の台風で彦右衛門谷が埋まり ここに堰堤を作ったらしい。 |
||||||
河原の向こう側にある山をじっと見ていると、クラクラしてくる。 山が大きく見えるので、脳は山が近くにあると判断する。 しかし、あまりに河原が広く、山までの距離があるので そのギャップに脳がうまく情報を処理できず、 ここを訪れた人は、この幻惑をぜひ体験してもらいたい。 |
||||||
よし、いよいよ探検のはじまりだ。 まずは、地蔵尾根の入り口を見つけるぞ。 |
||||||
河原に向かって下りていくと、 堰堤の下に降りることができない。 むむ、早くも困難に直面だ。 |
||||||
林道の方向に目をやると、 よしよし手すりがあるぞ。 |
||||||
まずは、キリヤマ先行で下りていく。 そして下に降り立った、まさしくそのときだ。 黒い物体が、左方向に駆け抜けていった。 大きさは中型犬くらいだ。すわ、これはクマか。 |
||||||
大きさからして、小グマか。 ということは、親グマも近くにいるのか。 これはいかん。 あわてて堰堤を登りかえす。 |
||||||
親グマがいるかもしれないので、下りることができない。 どうしよう。クマはいるのか、それともいないのか。 物音はまったくしない。気配も感じない。 もしも気配を消していたら、とても恐ろしい。 アンヌ隊員、動物の気配を感じるか? |
||||||
って、お菓子を食べている。おいおい、 もうちょっと緊張感をだしてくれよぉ。 (またこのネタかい) |
||||||
緊張するキリヤマ。食べるアンヌ。 これは、もはや我が隊のスタンダードといってもいい。 読者も呆れていることだろうこのネタ。しかし、 この探検記はノンフィクションなので、アンヌ隊員の おなかがへる限り、今後もこのネタは出てくるだろう。 |
||||||
さて、しばらく待ってみるが、 どうやらクマはいなようだ(たぶん)。 足早にヤブを通り過ぎる。 |
||||||
さらに下の堰堤を向こう側(写真奥)にわたってから下る。 そして、河原に降り立つ。 |
||||||
源造尾根の向こう側に進む。 | ||||||
ここで約束していた、おにぎりタイムだ。 これを忘れるとアンヌ隊員が騒ぎ始める。 |
||||||
源造尾根の淵をなぞるようにして 尾根の反対側に進む。 |
||||||
地蔵尾根と源造尾根の狭間を沢沿いに進む。 この辺りで自然の環境がグっと変わってくる。 とても山奥に来たんだ。そう実感する。 |
||||||
岩水沢の出合いに到着。 |
||||||
向こう岸(右岸)に地蔵尾根の入り口がある。 とても意外なところにある入り口だ。 この看板がなければ、まさかここが 入り口とは思わないだろう。 |
||||||
沢の流れが思いのほか速く、しかも深い。 スパッツをつけて一気にわたる。 |
||||||
少し上流のところから沢をわたり、 へつって下ってくる。 |
かくも危険な登り。いくぞアンヌ隊員 |
||||||
さぁ、いよいよ本日のメイン探検だ。 ほぼ垂直の壁を登るぞ。(09:50) |
||||||
登山口の入口にあるロープにすがりながら 最初の取り付きを登る。 |
||||||
木、岩、ロープ。 つかまれるのものは、なんでも利用する。 |
||||||
最初の取り付きの上は、 岩の脇をへつる道になっている。 |
||||||
次にいくつもの岩が重なる急な登りになる。 |
||||||
ここはアンヌ隊員に先行してもらう。 もしも登れなくなったときに、 わたしが下りの指示を出せるようにするためだ。 |
||||||
ホールドはあまりない。 ロープが頼りだ。 |
||||||
無事クリアー。 今、アンヌ隊員のたっているところは、切り立ったところ。 背中は崖で、定員は1名。 こんなところは、丹沢の登山道ではそうめったにない。 |
||||||
いかに急な斜面か、等高線を見ると よくわかる。等高線の間が、とても 狭くなっている。 |
||||||
それでも、ロープが所々に設置されているので、 とても助かる。 |
||||||
危険なところは、三点確保でしっかり登っていく。 こんなところで滑落したら、 今日で探検記が最終回になってしまう。 |
||||||
やがて、厳しい登りが少し緩んでくると、 |
||||||
ケルンのあるテラスに立つ。 |
||||||
おそらくは下ってくるときの目印だろう。 しかし、こんなところを下れるとは思えない。 |
||||||
わずかにある踏み跡やテーピングのおかげで ルートを外れていないことがわかる。 |
||||||
いったい、いつまで道の無い斜面を登ればいいのか、 と思っていると、ようやく稜線が見えてくる。 |
かなりの難所続き。大丈夫かキリヤマ |
||||||
こうして地蔵尾根に到着。(10:30) さぁ続いて地蔵尾根の探検だ。 |
||||||
原生林が続く稜線だ。 木と木の間がゆったりとしているので。 森全体が明るく気持ちが良い。
|
||||||
葉を通して届く光が、とても優しい。 しかし、この尾根の優しい自然は、最初だけで、 先に進むとだんだん厳しい自然環境になっていく。 |
||||||
急な登りの岩場をいくつも越えていく。 |
||||||
木々に遮られて、展望はほとんど無い。 岩場の難易度はそれほどでもないが、 慎重に進んでいく。 |
||||||
やがて道は尾根をトラバースするように進む。 |
||||||
そして1159 m 地点の真下にある、高みに立つ。 木々におおわれて、展望はないが、 袖平山の方に向かって叫ぶと、こだまが2回かえってくる。 天然のエコーだ。 |
||||||
「やっほー」 (やっほー やっほー) 「マイナールート 探検隊」 (マイナールート 探検隊 マイナールート 探検隊) 「キリヤマ 隊長 すごいぞ」 (キリヤマ 隊長 すごいぞ キリヤマ 隊長 すごいぞ) |
||||||
これは、すごい。 こんなにはっきり聞こえるこだまは、 初めてだ。そのほか、いろいろ叫んでみる。 |
||||||
ひとしきり楽しんだ後は、 斜面を登っていき、 |
||||||
ロープに頼って尾根のツメを登り 尾根の上に立つと、 |
||||||
おお、これが噂に聞く、剣か。 かつて剣岳にあったという鉄剣を思わせる風貌だ。 かっこいい。 でも。 |
||||||
ちっちゃい。 |
||||||
この 1159 m 地点からの展望は、すばらしい。 深い谷間から生える木々の上が、自分の目線と同じ高さだ。 その向こうには隣の尾根がすぐそばに見える。 そして、さらに向こう側には蛭ヶ岳も見える。
自然のもつ怖い一面を見た、そんなことを感じさせるところだ。 人間の力を超えた、大きな自然の力。 人間の存在は、なんと小さなものなのだろう。
|
||||||
1159 m 地点から先は、キレットの岩場だ。 両脇はスッパリと切れた絶壁で、かなり緊張するところだ。 |
||||||
そして、しばらくは急な登りだ。 |
||||||
尾根は原生林が続き、険しい感じがする。 |
||||||
切り立った稜線もあり、 トラバースする所もある。 |
||||||
続いて、カニの横ばいだ。 |
||||||
尾根を巻いて、崖っぷちを通過する。 こういうところは、崖の下を見るととても怖いので、 なるべく見ないようにする。 |
||||||
地蔵尾根は、難所が多い。 地図に書かれている「上級者向け」というのは、 あながち誇張ではなさそうだ。 |
||||||
木々におおわれているので展望がほとんどない稜線だが、 ここで、わずかに木々が切れ展望を楽しめる。
|
||||||
少し先にはクワが立っている。 長いこと放置されているようだ。 |
||||||
だんだん、踏み跡がはっきりしなくなってくる。 尾根も広くなり、テーピングもなくなってきた。 本当にこのまま進んでいいのか。 ちょっと不安になってくる。 |
||||||
とにかく高いところに進めばいずれは、 地蔵平に到着するだろう。
|
||||||
こうして開けたところに出ると、そこが地蔵平だった。 岩水沢出合から2時間30分だ。(12:20) |
||||||
地蔵尾根の道しるべにも「上級者向き」とある。 |
||||||
よし、地蔵尾根を攻略したぞ。 すごいぞ、マイナールート探検隊。 本日の探検はこれで、成功だ。
|
そして、カラマツを愛する者へ |
||||||
地蔵平は広く平らなところだ。 すぐ近くには、姫次、蛭ヶ岳の登山道が通っているが、 登山道から少し離れているこの場所は、 あまり人がくることもないだろう。
|
||||||
ここで、昼食。 アンヌ隊員、タッパーを出す出す。 いっぱい出てくる出てくる。 |
||||||
昼食後は姫次に向かう。 地蔵平を横切って、登山道をさがす。 森の中を蛭ヶ岳を背にして進んでいくと、 |
||||||
姫次、蛭ヶ岳間の登山道に出合う。 この登山道は、丹沢主脈といわれているところだ。 |
||||||
登山道の周辺にカラマツの林がある。とてもきれいだ。
わたしは今日、イベントを考えてある。 それは、姫次のカラマツ林を前にして、 北原白秋の「 |
||||||
わびしい感じのする姫次のカラマツは、 詩のイメージとぴったりだ。 ぜひ、姫次のカラマツ林の前で朗読して、 アンヌ隊員と一緒にこの詩の美しさを 味わってみたい。 |
落 葉 松 北 原 白 秋 一 二 (以下略) |
|||||
そこで、アンヌ隊員に 間違っても、朗読した後に 「何か食べよう」などといって いつものマンネリパターンにならないよう 釘を刺しておく。 |
||||||
こうして原小屋平を通過する。 |
||||||
かつてここには、山小屋があったそうだ。 そのときの土台だろうか。 コンクリートの石が埋まっている。 |
||||||
先ほどの地蔵尾根とは違って、とても整備された道。 さすがは丹沢主脈だ。 |
||||||
地蔵尾根は、怖いほどの力強い自然を見せてくれたが、 ここは人を包み込むような優しい自然だ。 わずかな距離で、自然の環境は、こんなにも変わるものなのだろうか。 |
||||||
こうして、姫次に到着。(13:40) 周囲のカラマツ林が、予想通り青々としている。 |
||||||
カラマツの葉は、なんと繊細なのだろう。 こんな繊細な葉が織りあって作られているなんて、 創造主なるものをどうしても考えてしまう。 |
||||||
さてここで、北原白秋の「落葉松」を朗読する。 からまつの林を過ぎて、 うん、いい詩だ。 カラマツのわびしさが、心にしみ入る。 |
||||||
明治文語調の美しい日本語。そして、姫次のカラマツ。 時代は移り変わっても、カラマツを思う人の気持ちは 変わらないのだろう。 |
||||||
アンヌ隊員もきっと、すばらしいと感じてくれているだろう。 「いい詩だ。気持ちが落ち着くね」 「ああ、そうそう、いい詩ね」 「ええ、それだけ? もうちょっと、なんかない?」 「ええっと、ドラ焼き食べる?」 |
||||||
「あぁ、それじゃいつものパターンじゃない」 「だってドラ焼きが出てきたんだもん」 「それって理由になってないぞ」 「まぁまぁ」 (結局、わたしもドラ焼きを食べた)
|
||||||
さぁ、あとは神ノ川ヒュッテまで下る。 カラマツを楽しみながら、ゆっくり進む。 |
||||||
袖平山のベンチを通過して、(14:10)
|
||||||
風巻ノ頭までの、稜線を下っていく。 この間、トレイルランニングのランナーと数名すれ違う。 そういえば、来月に北丹沢耐久レースがあるらしい。 ここも、そのコースに入っている。 |
||||||
これから山に入るだなんて、ちょっと遅いような気がするが、 ランナーにとっては、登山道はランニングコース。 短時間で登って、ちゃっちゃと下るのだろう。 |
||||||
こうして、風巻ノ頭に到着。(15:00) |
||||||
もちろんアンヌ隊員は補給をとる。 |
||||||
あとは林道まで、せっせと下って、 |
||||||
マイナー探検1号に到着。(16:00) すばらしい探検に祝福を。 |
・地蔵尾根は、下りに使ったら迷いそうだ。一度登った尾根は、記憶に残る。 だからたいていは下りにも使えるが、地蔵尾根は、登っているときにでも 後ろを振り向くとどこを登ってきたのか、はっきりしなかった。とくに 最後の地蔵平の直下は、道もなく尾根もはっきりしていない。
|
・地蔵尾根を登っているときに、わたしが感じた自然の驚異。これと同じものを、 以前に探検した東沢乗越や同角山稜でも感じた。 アンヌ隊員いわく、「人が入っていない、原始の世界」だ。
|
・姫次で読んだ北原白秋の「落葉松」は、わたしが若い頃から好きな詩だ。 このような美しい日本語は、声に出して読むとその語幹の響きを 耳で感じることができる。
|