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滑落に注意せよ、源次郎沢だ

戸沢 〜 源次郎沢 〜 花立 〜 戸沢

2009年9月13日(日)、天気:晴れ

行動時間 7:30〜12:40( 5h 10min )

探検メンバー : キリヤマ隊長、アンヌ隊員

 

アンヌ隊員は先週の沢デビュー以来、すっかり沢のとりこに

なってしまった。そこで我が隊は、次のターゲットに源次郎沢を

選んだ。

  以前、わたしはフルハシ隊員と源次郎沢に入ったことがある。

記憶では、フルハシ隊員は源次郎沢は二度とごめんだ、と

いっていたような気がする。はて、どうしたのだっけ。

その理由を、わたしはF4の壁にへばりついたときに思い出す。

そうだった。彼もここで詰まり、危険な思いをしたのだった。

  初めて体験する滑落への恐怖。キリヤマはこの難関を

どのように克服するのか。

 行くぞ、マイナールート探検隊。

 

困難を克服せよ

戸沢の駐車場にマイナー探検1号を駐車。

入念にストレッチをする。今日も準備は完璧だ。

(7:30)

さぁ、今日も沢のスタイルで

ファッションショーだ。

まずは、書策新道を進む。

書策新道には源次郎沢の道しるべがある。

現在、書策新道は崩壊しているところがあり、

通行禁止になっている。

探検家歓迎のテープをくぐる。

すぐに源次郎沢の道しるべに出合う。

ここから沢に下りる。

この沢は人気があるので、道しるべがしっかりしている。

沢に降りると、まずは堰堤を2つ、

右側(左岸)から越える。

はじめは水量が少ない。

岩の上を歩いていくと、だんだん水量が増してくる。

そして最初の滝、F1 - 4m だ。

斜度があまり無いので、緩やかな流れの滝だ。

源次郎沢の滝には、最後の F10 まで

F ナンバーが記載された看板がある。

F1 は左から登る。

ホールドがしっかりあり、難なく登れる。

その先、5分ほど進むと、

F2 だ。

ここもホールドがしっかりしており、難なく登れる。

エッヘン。

得意満面のアンヌ隊員。

もうすっかりベテランだ(気持ちだけ)。

源次郎沢はナメ滝が多い。

水が足元を流れているのを感じる。

まるで身体全体が水の流れの中にいるように

気持ちがいい。

次は、F3。

大きな岩が左からせり出している滝だ。

巻き道は右にある。

アンヌ隊員は無理をせず、巻き道を行く。

F3上部は、ホールドが少なく、

ちょっと登るのが難しい。

しかし、うーむ、そそられる。登りたい。

わたしは巻かずに流れの中を進んだ。

F3とF4の間には小さな滝が連続している。

初心者のわたしにとっては、

こういった小さな滝を越えることが沢登りの魅力だ。

こわかった

F4。

ここは右壁の岩をへつって(横ばい)越える。

この後、わたしは大失敗をする

少し難しいところなので、アンヌ隊員が先行で

後ろからわたしが指示をする。まずアンヌ隊員は無事クリアー。

 

次はわたしの番だ。岩を少しへつったところで、

残留ビレイの写真を撮ろうと少し足場を変えた。

これが大失敗。次の足場がなかったのだ。

次の足場を探してうろたえる。しまった、この一歩前は

足を組み替えるべきだった。(アンヌ隊員は組み替えたらしい)

心拍数が一気に上がる。いまさら気がついても、もう戻れない。

残留ビレイのロープにつかまり先に行こうとするが、

さらに足場がなくなってしまう。

 

体が「大の字」になり壁にへばりついて、身動きできなくなった。

やってしまった。このままでは、下手に動くと滑落してしまう。

わずか2m先にはアンヌ隊員がいる。ああしかし、

そこに行くことができない。先に進めず、後に戻れない。

 

ここは上方向へ突破するしかない。とにかく落ち着くんだと言い聞かせるが、

かなりパニックになっていたようで、どうやって登ったのか、

まったく記憶が無い。(木の根につかまったような気がする)

こうして、かなり下に沢が見えるところまで登って来た。

 

なんとか一命をとりとめた(オーバーだ)。

ふと見ると、反対岸に巻き道が見える。

えーなんだぁ、あっちを通ればよかった。

 

そういえば、2007年にフルハシ隊員もこの壁で死ぬ思いをしたのだった。

(以来、彼は二度と源次郎に入りたくないと言うようになる)

F4 から先は、また小さな滝が連続している。

 

なんだか緊張感が続いており、

思うように足が進まない。

(もう帰りたくなってきた…)

そんなわたしを尻目に

ルンルン気分のアンヌ隊員。

この辺りから沢が開けて、明るくなってくる。

そして沢が大きく右にカーブしたその先に、滝が見えてくる。

F5 - 8m だ。

源次郎沢を登る人にとっては、前半の山場だ。

通常、この滝は左側を登るらしい。

しかし、滝の落ち口のあたりで岩がせり出しており

ロープで身を確保しなければ、とても登れない。

(源次郎沢は事故が多いと聞く)

さらに左には、初心者用の巻き道がちゃんとある。

天井が低い岩屋の中を通過して登っていく。

この先は、二俣になっている。

左に進むと、すぐに沢が涸れて、大倉尾根に出る。

2007年にフルハシ隊員と来たときは、左に進んだ。

アンヌ隊員が怖がるようならこのまま左に進んで、

切り上げようとも考えていた。

しかし、アンヌ隊員は絶好調だ。(我が隊で、にわかに流行中のピースだ)

ここから先はわたしも初めてのコースなので、少し不安だ。

もっとこわかった

右俣に進むとすぐにF6 - 2段 10mが見える。

源次郎沢の最大の滝だ。

1段目は難なく登れる。問題は2段目だ。

これはとても登れない。

巻き道は左にあるが、

ええ??ここを登るのか?

けっこう急な斜面だ。

崖の斜面を登る。急な斜面というより、もはや壁だ。

木の根につかまって登る。とってもデンジャラスだ。

巻き道の上部は、滝の落ち口までへつる(横ばい)。

おお、これは怖い。わずかにある足場の下は何もない。

さらに、岩がせり出している。

せり出している岩に、ビレイ支点がある。ロープを通してみた。

むむ、この支点は下からクライミングするときに

身を確保するためのもので、ここをへつるための補助にはならない。

どうしようか。

やばい、こんなところに立っていると滑落しそうで危険だ。

へつるのではなく、上に進んでみよう。

さらに上に少し進んでみる。しかし、登れないことがすぐに分かる。

さらにやばい、下れなくなった。

 

どうにか元の位置まで下ってくる。

ここはアンヌ隊員には危険すぎる。別なルートを探そう。

「ここ、下れるのかしら」とアンヌ隊員。

登りが危険なところは、下りもその10倍危険だ。

木の根にお助けロープをかけて、補助にする。

 

かなりの高度感があり、とても怖い。

(今日はなんだか怖い思いばかりしている)

よし、なんとか下ってこられた。

 

ここで単独の探検家と出会う。むむ、達人だろうか。

我々は断念しました、と言うと彼は

「わたしは行ってみます」。

よし、ベテランの技術を研究だ。

彼は我々が断念した巻き道を、スイスイ登っていく。

滝の落ち口あたりの難所も、軽くクリアー。

 

おおすごい。思わず出るため息。そして拍手。

彼は「何とか行けました」と最敬礼をして行ってしまった。

さて我々は、さらに下流から大きく巻く道を探すことにする。

これ以上、アンヌ隊員を危険な目に合わせるわけにはいかない。

この先の巻き道はつかむところがなさそうなので、

ドライバーを用意する。むむ、またしても緊張する。

と、突然アンヌ隊員のおにぎりコール

時間が来ると必ずおなかが減るらしい。

緊張してないのかなぁ。

(緊張してもおなかは減るのよ)

いよいよ、巻き道を登る。

お!、スリングがかかっている。

ここを登る人も多くいるのだろう。

ヤブが邪魔で思うように登れない。

しかし、そのヤブにつかまって登ることもできる。

そして、なんとか尾根に立つ。

ここから今度は沢に下りる。

F6 の落ち口辺りに向かって道が付いている。

だが、途中で道が崩れている。

うまく通過できるのかな。

崩れているところが通過できない場合は、

下降できるようにロープを垂らしてておく。

わたしが先に通過。続いてアンヌ隊員も無事通過。

こうして、F6 の上部に立つことができた。

いつものことだが、沢登りは滝より

巻き道のほうが難しいことが多い。

F6 の上部は穏やかな流れが続く。

もう難しい滝は出てこないといいなぁ。

アンヌ隊員は緊張感がまったく無いけど、

大丈夫かなぁ。

なんだか先のことが不安になってくる。

沢の水量がだんだん減ってくる。

気持ちの良いナメ滝もこれが最後だ。

水は涸れても滝はある

F7 。

水がすっかり涸れている滝だ。

岩と岩の間をすり抜けるように登るのだが、

ザックが岩にぶつかって、くぐるのに難儀する。

先に登ったアンヌ隊員にザックを渡して

続いてわたしがトライする。

うぇー、はさまれたぁ。

F8。

水が涸れて、もはやどこが滝だかわからない。

アンヌ隊員の補給タイムを経て、

F9、二段 4m+4m。

上部に大岩が乗っているCS(チョックストーン)だ。

ここは右の壁を巻く。

かなりごつごつしているので、

難なく登れる。

CSの上部、二段目をさらに登っていく。

F10

Fナンバーの滝はこれで最後だ。

岩にロープやスリングがかかっている。

これを使って登れるのかな。

適当にホールドもありそうだ。

うーん、上部のホールドが良く見えない。

落ち口あたりが不安だ。

ちょっと無理かなぁ。

左側に巻き道が付いている。

ここを登ろう。

ここもかなり難儀する。

木の根につかまりながら登っていくと、

滝の落ち口あたりに下りる道が付いている。

ここは安全に下りられる。

うわー、やっぱり巻き道を使ってよかった。

上から見るとけっこう岩がせり出している。

それにかなりの高度感がある。

さらにその先は、水が涸れている沢を登っていく。

このあたりまで来ると、左に明確な尾根が見えているので、

いつでも沢から離れられる。もう危険なところはないだろう。

沢を忠実につめていくと、やがて笹の原になる。

青空と緑のコントラストが

はっきりしているところに出る。

行く手を大きな岩が阻んでいる。

もうこのあたりは、どこが沢なのか

わからなくなる。

笹原が太陽の光に輝いて、とてもきれいだ。

沢の源流付近は、ガレ場が多いのが普通だが、

こんなに美しい沢はめずらしいのではないか。

そして、崖の下に出る。

崖の左下には道が付いている。

道に従って崖の上に上っていくと、

岩が赤っぽい感じになっている。

ガイドブックによると、このあたりから大倉尾根に向かうはずだ。

この付近の岩は、南アルプスの山々にあるような、

荒々しい感じの岩だ。

この尾根に上ると、大倉尾根まではすぐのはずだ。

今日はとてもいい経験をした。感動だ。

 

尾根に出ると、秦野市街が一望できる。

ここが噂に聞く源次郎尾根かな。

尾根を道なりに登っていくと

大倉尾根に出る。登山者がたくさんいる。(11:18)

つい先ほどまで、誰もいない沢で緊張の連続だったのに、

このギャップに戸惑う。

少し下ると、そこは花立だ。

ここにも多くの登山者がいる。

沢登りのことを知らない人が見たら

我々はただの「変な人」なのだろう。

この後、天神尾根を下って、

戸沢のマイナー探検1号に無事到着。

 

感想

・Fナンバーの看板が新しくなったようだ。F3以降の番号がひとつ増えている。

 ガイドブックのナンバーと一致していないが、今回の探検は現地の看板にしたがって

 Fナンバーを記載した。

  

・源次郎沢は初級の沢らしい。この沢が初級だと、中級以上の沢は一生かかっても

 登れそうにないなぁ。

・大倉尾根の有名人、チャンプさんと出会う。この日はプロパンボンベを担いでいた。

 重さを聞くと、なんと40 kg!。

  

(チャンプさんは、いつもにこやかな楽しい方だ)

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