全米を泣かせた、キリヤマの赤岳探検

2016年09月7日(金)8日(土)

(1日目)赤岳山荘 〜 北沢 〜 赤岳鉱泉(宿泊)

(2日目)赤岳鉱泉 〜 行者小屋 〜 地蔵尾根 〜 赤岳 〜 文三郎尾根 〜

     行者小屋 〜 南沢 〜赤岳山荘

 

我が隊には3つの憧れがある。

ひとつは、天狗岳。もう一つは、赤岳。

そしてもうひとつは、わたしのイケメンに時代が追い付くことだ。

 

今年は天狗岳へ登頂することができた。そして、ついに赤岳に挑戦するときがきた。

もはや思い残すことはない。行くぞマイナールート探検隊!

 

(1日目)赤岳山荘 〜 北沢 〜 赤岳鉱泉(宿泊)

赤岳山荘の駐車場に

マイナー探検1号を駐車する。

駐車料金2,000円(2日間)。

駐車場は全部で70台止められるらしい。

(山と高原地図(昭文社)より)

今回は、道路わきの駐車場に停める。

「奥のつ止い…(??)」

なに?ああそうか、横書きか。

縦に長い看板に横書きは珍しい。

奥からまっすぐ止めてほしい駐車場は

ほぼ満車(平日なのに・・・)。

下にある山荘「やまのこ村」の駐車場も

合わせて、140台止められる。

今夜の宿泊場所、赤岳鉱泉に向かう。

しばらくは車道を歩く。

美濃戸山荘に到着。

美濃戸山荘に宿泊する場合、

ここまで車で入れるらしい。

 

まだ全然歩いていないのに、

ここでおにぎりタイム。

美濃戸山荘のすぐ先に、

南沢と北沢の分岐がある。

今回は、北沢の方へ進む。

しばらくは林道歩き。

この道には、赤岳展望荘や

赤岳頂上荘のボッカ車が通る。

ボッカ車の駐車場に到着。

この日は5台止まっている。

橋を渡ると、分岐がある。

北沢の増水時のエスケープルートと

沢沿いのルートだ。

今日は沢沿いを進む。

環境保全林整備事業の看板がある。

これまた不思議な看板だ。

 

環境保全林整備事業って何をやっているの?

それとも、やったの?

期間は?目的は?範囲は?誰がやるの?

いわゆる5W1Hがひとつもない。

これはおそらく、詳細を書いてある

看板が流されてしまい、この看板だけが

残されているためと思われる。

 

山にある不思議なものは、

その理由が分かると種明かしになってしまう。

だから本当のことを知らない方が楽しい。

 

北沢沿いの登山道を進むとすぐに、

No.1ブリッジがある。

この登山道には、合計13ブリッジがある。

山道はとても整備されており、

道に迷うようなところはない。

No.6ブリッジ。

ここまで来て不思議なことに

気が付く。

 

橋にアイゼンの跡がない。

雪の降り方の違いだろうか

気温が低く氷が硬いからか。

謎だ。

やがて正面に横岳が、そして大同心が

見える。

わかりにくいので

ズームアップ。

大同心をズームアップ。

大同心は八ヶ岳を代表する岩壁。

存在感がとても大きい。

そして隣りは小同心と横岳。

No.9ブリッジ。

こんなにたくさんの橋があると、

人が多い時期は、かなり渋滞する

だろうな。

鉱泉があるせいか、

水流の底だけが赤くなっている。

ちょっと不思議だ。

沢を離れると、

森の中を通り抜ける

幅の広い道になる。

駐車場から2時間30分で

赤岳鉱泉に到着。

氷のクライミングウォール

アイスキャンディーを建設中だ。

赤岳は雲の中に入って、見えない。

明日の天気は曇りの予報。

展望は期待できないだろうな。

ズームアップすると、

稜線には赤岳展望荘が見える。

そして、大同心。

この角度だと、名前の由来なっている姿、

仏僧が手を合わせて拝んでいる姿に見える。

 

そして、本日宿泊する赤岳鉱泉。

ここはとても人気のある山荘だ。

入り口付近の休憩所。

ここは自由に休憩していい。

登山者がたくさん休んでいる。

メニューも普通にある。

飲み物のメニューもある。

受付を済ませて、本日泊まる

大部屋に案内してもらう。

 

とてもきれいに清掃されており、

気持ちのいいところだ。

増築を繰り返しているためか、

廊下が長い。ここもとてもきれいだ。

ちょっと個室を覗いてみると、

ベッドがある。ゆっくり寝られそうだ。

洗面所では、飲料水を補給できる。

石鹸は使えないが、消毒液が

備え付けてある。

ヘルメットとアックスの貸し出し。

こちらは氷のクライミング、

アイスキャンディーで使う。

 

そしてお風呂。

湯殿は2人が定員かな。

仲間同士なら3人もいけるだろう。

食堂はとても広い。

今回は素泊まりなので、

食事のメニューは分からず。

 

そして、自炊室。

我が隊はいつも素泊まりなので、

自炊室がないととても困る。

 

ここには、漫画や雑誌がたくさんある。

雑誌は古いものもたくさんあるので、

ながめているだけでも楽しい。

アルファ米の食事を早々に済ませ、

アンヌ隊員が床に就いたのは19:00。

 

私は漫画を読んでしばらく起きていたが

ふと気が付くと、他の人(7人)は

とっくに寝ていた。(早!!)

 

(2日目)赤岳鉱泉〜行者小屋〜赤岳〜行者小屋〜南沢〜赤岳山荘

翌朝は、6:40に出発。

曇っているが、気温は低くない。

これなら探検に何ら問題ないだろう。

行者小屋への登山道を20分ほど進むと

階段になる。

階段には、なぜか印籠がある。

これは登山用品メーカー

マムート社のロゴだ。

 

この階段はマムート製か、

それともコマーシャルか。

これはいい宣伝になる。

垂れ幕やポスターと違って、

足元は必ず見るわけで、ロゴマークが

皆の脳に擦りこまれていく。

 

なんだか、マムート社への好感度が

上がったような気がする(ホントか?)。

出発して30分ほどで中山乗越に到着。

ここは、中山展望台への分岐だ。

 

今日は曇っているので展望台には

向かわずここで休憩。

中山乗越と記された

古い道しるべがある。

 

ここには、変わった地図がある。

山の名前を示している地図と

思われるが、残念ながら

文字がかすれている。

おそらく八ヶ岳の天空図だろう。

 

ところが、これを見たアンヌ隊員。

「なんでクマが描いてあるのかしら?」

「ええ?どうしてクマなんだよ?」

 

どう見たってクマの絵には見えないぞ。

 

「だってこれが耳でこれが鼻、目でしょ」

うん????

まぁ、そう見えなくもないが・・・。

ちょっと独創的過ぎないか?

 

「きっとクマ注意の看板よ」

「いや、山の地図だと思うよ」

 

アンヌはちょっと不満そうだが、

ここでは地図で納得してもらう。

 

アンヌのオリジナル解釈はともかく

この道しるべは、かなり年季が

入っており、近くには新しい道しるべ

も立っている。

 

もはや役目の終わった道しるべだが、

こうして楽しんでいる者もいるので、

このまま、ぜひ鎮座し続けてほしい。

 

ここでいったん道は下り始める。

また、マムート階段がある。

洗脳レベルがさらにアップする。

もはや、このロゴを踏むことが

できない。

すっかり洗脳されてしまった!

(踏絵か?!)

 

赤岳鉱泉を出発して50分、行者小屋に到着。

ここで、おにぎり(アルファ米)タイム。

 

周囲の登山者を見ると、

雨は降っていないのに、

皆レインウエアを着用している。

それを見て、我が隊も慌てて着用。

山頂はきっと雨風が強いのだろう。

先日購入したレインウエア

ゴアテックス大明神の出番だ。

 

さぁいよいよ、地蔵尾根へ。

さすがは、赤岳への登山道。

急坂っぷりがすごい。

手すりにつかまらないと

登れないくらい急な階段。

 

ここは階段がなかったら、

ロープで確保が欲しいところ。

危険な岩壁だ。

そして、これは新しいタイプの階段。

弾力性があり、ちょっと登りにくい。

 

工夫は感じられるが、皆の反応は

どうだろうか。

かなり急こう配。

振り返るとアンヌの頭の上が

見えるほど急な坂だ。

そして、これまた急な階段。

ここも階段がなければ、

滑落の名所になるところだ。

あまりの急こう配で

四つん這いになって登る。

 

手足を使って登る階段は

非常に珍しい。

これぞ八ヶ岳クオリティだ。

行者小屋が見える。

急な坂をこれだけたくさん登ってきた。

だから、気持ちとしては行者小屋が

もっとちっちゃく、米粒くらいに

見えてほしい。

(実際にはレコード盤くらいに見える)


硫黄岳と大同心が目線と同じ位置まで

見えるようになってくる。

阿弥陀岳の展望を期待していたのだが、

残念ながら雲の中。

またまた急こう配の階段。

手すりもあるのだが、

四つん這いの方が安心だ。

そして、クサリ場。

カニの、ななめバイだ。

ここは、クサリにつかまっていないと

足元が崩れたとき間違いなく滑落する。

 

なんとか二等兵は死んでもクサリを

放しませんでしたとばかりに

しがみついて登る。

 

クサリがあるとかえって危ないような

クサリ場が多い昨今、ここのクサリは

伊達ではない。

 

クサリに頼って登るだいご味を

味わって登りたい。

お地蔵さんがある。

阿弥陀岳を見ているように設置

されている。

 

そんなに古くなさそう。

もう10年もしたら、いい感じに

風化しそうだ。

稜線の直下まで、クサリが設置されている。

これは登山道を踏み外さないように

道しるべの役目にもなっているようだ。

こうして、地蔵の頭に到着。

(行者小屋から1h 20min)

まずは、稜線に到着だ。

ここには、赤いエプロンを着けた

お地蔵さんがいる。

ここからは、稜線沿いの登山道。

さえぎる岩壁がなく、風の直爆を受ける。

この日の風速は15〜20メートル。

 

進行方向、右側から風が吹き抜ける。

なるべく岩陰に隠れて進んでいく。

地蔵の頭から3分ほどで、

霧の中から赤岳展望荘が見えてくる。

 

いつもたくさんの登山者で

にぎわっているこの場所。

今日は誰もいない。

赤岳展望荘でちょっと休憩。

この先の天候を考えて、転進するかどうか

対策を立てる。

 

目の前の赤岳を登らずに転進する

のは、あまりにもったいない。

転進せずに進む決心をする。

 

ここ赤岳天望荘から赤岳山頂まで

標高差177mだ。

 

177mは、たいしたことがないかもしれない。

しかし、雨風と霧、濡れた岩場、

そし急峻な坂。悪い条件はすべて整って

いると言っていい。我が隊にとっては

かなりハードルが高い。

 

赤岳まで最後の登り。

赤岳への登山道は、写真で見ると

いつも長く行列が続いている。

しかし、この日は誰も登っていない。

たとえ登っていても見えないだろう。

晴れていれば、

←こんな感じに

赤岳が目の前に見えるはずなんだけど、

まったく見えない。

そして、なにより風が強い。

時折、吹き飛ばされるほど強く吹く。

この日の風は、強風がデフォルトだ。

雨で岩が濡れており、滑りやすい。

歩く速度は、どうしても遅くなる。

霧のために先がよく見えないが、

踏み跡はしっかりあるので、

道を外すことはない。

そして、岩場にはクサリが設置

されているところが多くあり、

手掛かりになる。

 

しかし、私は道迷いの王者、キリヤマだ。

何度もクサリを見落とし、道を外したことを

王者の証として記しておこう。

 

赤岳頂上荘に到着。

とりあえず、ここまで無事到着。

周囲には誰もいない。

こんにちは〜。

入り口から中を覗いても

誰もいない。物音一つしない。

 

お邪魔することなく、

外の物陰でひとまず休憩。

外にある温度計は、12度。

気温が高くてよかった。

 

この風で気温が低かったら、

寒がりのアンヌ隊員は気絶して

いたかもしれない。(私は即死)

赤岳頂上荘の裏手に回ると、

なんだ、もう赤岳の頂上が見える。

よっしゃーついに山頂だ。

こうして、山頂に到着。

いつもなら山頂でおにぎりタイムなのだが、

アンヌ節「おなか減ったね」が出てこない。

(この状況じゃ、当然か)

それでは、お決まりの、

すこいぞマイナールート探検隊!

ついに来たぜ赤岳。

我が隊の最高峰 2899mだ。

山頂の岩陰で休憩を取っていると

小さな鳥が歩いている。

(帰宅して調べたらイワヒバリだった)

岩の合間の餌を突っついている。

バードウォッチャーでもなかなか見られない

イワヒバリを目の当たりにすることができて

とてもラッキーだ。

 

この後もきっといいことが

続くに違いない(希望的観測)。

さぁ、いよいよ下山だ。

文三郎尾根の分岐まで稜線を進む。

 

山頂の直下に梯子がある。

とても強い風が吹き上げてくる。

後日聞いた話では、ここから文三郎尾根

の分岐までが、もっとも風の強い区間

らしい。この日は、風速20m。

 

岩陰に身を寄せなければ、

まともに立っていられない。

このハシゴを下った後、

矢印の方向に下っていく。

風の吹き上げてくる崖を

トラバースする道だ。

 

ここが一番強い風のポイント、

本日のハイライトだ。

本当にここをトラバースするのか。

実は、道を間違えているのではないか。

 

下を覗き込むと、

鎖場が見える。ということは、

ここで間違いないようだ。

 

しかし、ここはどうしても

風と直面することになる。


「どうする?戻ろうか?」

「ここまで来て?もったいないわ」

 

まぁ、道が悪いわけでもないから

濡れた岩に注意すれば大丈夫か。

あとは、強風だけだ。

 

「よし、下ろう」

 

こうして、難所の崖を下る。

先頭は、私。セカンドがアンヌ隊員。

もはや後ろを見る余裕はない。

(もちろん、写真は撮れなかった)

お互いをロープでつなぐアイザレンを

しておけばよかった。

 

こうして人生で一番強風の

トラバースを必死に通過。


岩陰になっているところに

やっとのことでたどり着く。

ここは、竜頭峰分岐だ。

ようやく写真を撮ることができる。


稜線はここまで。あとは下山道だ。

下山の文三郎尾根を見下ろすと、

クサリがなければどこが登山道か

分からない道。

そして、やはり下から猛烈に風が

吹き上げてくる。

 

ここまでくると、感覚がマヒしてくる。

もうどうにでもしてっ!

という感じ。無言でひたすら下る。

稜線から20分ほどで

キレット分岐に到着。

ここまで来ても、まだ風が強い。

さらに10分ほど下って

文三郎尾根分岐に到着。

(ここまで写真をほとんど撮れず)

さらに20分ほど下ると

ようやく、霧が晴れてくる。

山頂にかかっていた雲の下まで

下ってきたようだ。

風はまだ強いが、雨が止んでいる。

さらに下っていくと、

風もおさまってくる。

 

そして、ここからは長い階段が

続いている。多くのパーティとすれ違い、

長いこと停滞することしばしば。

(彼らはこれからあの風の中に向かうのだ)

こうして、行者小屋に戻ってくる。

よし、これにて赤岳攻略と言えるだろう。

ここで一休み。

行者小屋名物、と銘打つおでん。

湯気が立っており、なかなか美味しそう。

フタを取って中を見ると、昆布だけ。

 

すぐわきで、おでんをうまそうに

食べているパーティがいる。

やつらが全部とったに違いない!

(と、何の根拠もなく睨みつける)

 

おでんはあきらめて、

カレーライスを注文する。

山の中でカレーライスを注文できる

なんてすばらしいことだ。ボッカを

してくださった方に感謝!

(ヘリかもしれないけど)

ここからの下山は南沢で、

まずはヘリポートの脇を通り過ぎる。

 

ここからしばらく沢沿いの

登山道だ。

美濃戸口まで、のんびりと下っていく。

数えきれないほど多くの人に抜かされる。

そして、数えきれないほど多くの人と

すれ違う。

行者小屋で聞こえてきた話では、

ここ南沢より私たちが昨日歩いた

北沢の方がオススメらしい。

(ただし北沢の方が大回り)

南沢を歩くこと2時間30分。

美濃戸山荘に到着。

ここから駐車場まではすぐだ。

 

これにて、今回の探検は終了。

すごいぞマイナールート探検隊!

八ヶ岳山荘にて日帰り入浴。(500円)

とてもきれいなお風呂だった。

 

登山が大好きな皆さんに

豊かな幸せが訪れますように。

それでは。

あとがき

 

帰宅して、中山乗越にあった

天空図の写真を見てアンヌ隊員が

また言った。

「これ、星の王子様よ」

「山と関係ないだろ!」

 

どこまで本気に言っているのか

よくわからないけど、半分くらいは

本気なんだろう。アンヌ恐るべし。

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