高山病を乗り越えて。八ヶ岳・硫黄岳へ

2015年10月2日(金)3日(土)

桜平 〜 夏沢鉱泉 〜 オーレン小屋(泊)

赤岩ノ頭 〜 硫黄岳 〜 夏沢峠 〜 桜平

高山には植物がないことから、アンヌ隊員は高山のピークハントに興味がない。

さらに私は、2,500m以上の山に登ると高山病で気分が悪くなる。そんなわけで、

あまり高い山に登るのは、アンヌにより禁止されている。

 

 しかし、やっぱり私は高い山に登りたい。八ヶ岳なら、天狗岳や硫黄岳に行きたい。

そこで、今回アンヌと話し合い(話し合うことができたのだ!)

少しでも具合が悪いようなら下山する約束で、硫黄岳に向かった。

 

 はたして高山病は大丈夫なのか。もしダメなら、私は生涯高い山に

登れなくなる。何としてでも、登頂しなければ!

 

本日の登山口、桜平に向って

別荘地帯を抜ける。

道がダートになると唐沢鉱泉への

分岐を右に進む。

ここから車一台が通れるほどの道が続く。

道の状況はあまり良くなく

普通乗用車では、走行困難。

(丹沢でいうと戸沢林道かな)

時速20km以下でゆっくりと進む。

桜平に到着。この林道の終点には

数台分の駐車スペースがある。しかし、

今回はそこまで行かずに、路肩のスペースに

駐車する。ガイドブックなどに30台分なんて

書いてあるけど、路肩のスペースも合わせて

その数字だと考えたほうがいいだろう。

車止めのゲートを越えて

林道を進む。

 

本日の目的地は、オーレン小屋だ。

山肌の木々が紅葉している。

紅葉を見ながら歩くので、

単調な林道歩きにならず、楽しい。

夏沢扇滝が見えてくる。

林道はこの夏沢沿いに続いている。

カメラマンが大勢いる。野鳥の撮影かな?

おや? カメラが地面に向いているぞ。

どうやらコケを撮影しているようだ。

 

キノコや花を撮影している人は多いが、

コケ・ウオッチャーとは!

八ヶ岳のコケは下草のように美しい。

写真に収めたくなる気持ちもよく分かる。

木に掛かっている名札が、バネで付いている。

これなら木が育ってもバネが伸びるので安心だ。

 

丹沢では、山頂の木に針金でくくりつけてある

山の名札を見かけるが、針金が木に食い込んで

痛々しい。あれはちょっと残念だ。

人間の都合も大切だが、木は話すことができない。

丹沢でもぜひ八ヶ岳のバネ方式を採用してほしい。

 

 

ダケカンバの紅葉が美しい。そして、

シラビソの葉が生き生きとしている。

そっと触れると、とても柔らかい。

夏沢鉱泉に到着。

ここまでは、車が入れるので

夏沢鉱泉は、山小屋というよりは

山荘なのだろう。

アンヌ隊員が何を見ているのかというと

森にからみついている、雲のかけら。

アンヌいわく「気絶しそうなほどきれい」

鉱泉の泉から湧き出た水が

堰堤の石を茶色に染めている。

オーレン小屋の運搬車とすれ違う。

丹沢のモノレールみたいだ。

タイヤではなくキャタピラー(R)だ。

レバーを引き、左右のキャタピラーの速度を

変えることで、左右に曲がることができる。

やがて林道が終わり、道幅が狭くなる。

そして、森の樹相が変わってくる。

サラサラと流れる小川。

空を泳ぐような紅葉の葉。

樹木と会話を交わすアンヌ隊員。

菜食のアンヌは、植物に対する感覚が

とても鋭い。

 

八ヶ岳の森の中で、アンヌの

インスピレーションは全開だ!

少し開けたところに出る。

思わずアンヌがため息。

「ここはいい気に満ちているわ」

 

よし、ここでおにぎりをたべよう!

おお!

これはとてもいい感じのダケカンバだ。

お気に入りの一本に認定!

なぁ、アンヌ。素晴らしいところだな。

しかし、おにぎりに夢中。(オイオイ…)

中身をじっくり見ている。

「これ、おいしい!」

「信州限定のおにぎりだって!」

 

アンヌは感受性が深いのか、

食い気が深いのか。

(おそらく両方)

空の青と紅葉の赤は

とても映える。

 

植物の持つ質感は撮影できない。

心にしっかり留めておく。

 

コケの緑と紅葉の赤もいい。

森のなかは、美しい。

アンヌいわく、

「神様のセンスは素晴らしい」

少し歩いて、立ち止まって感動。

これを何度も繰り返しているので、

なかなか先に進まない。

ようやくオーレン小屋に到着。

目の前には、明日登る硫黄岳が見える。

オーレン小屋の近くに水場がある。

生水だが、飲料OKだ。

15:00過ぎまで周囲の散策をして、

それからチェックイン。

小屋番募集のチラシ。

「居候 可」とある。

居候って、住み込みのことか?!

 

色紙が飾ってあるぞ。

これ誰の色紙? というか読めないものが多い。

「隊長も何か書いてこっそり飾れば?」

「うん、きっとバレないな」

(バレるって!)

そして部屋に案内してもらう。

オーレン小屋は、基本個室だ。

(混んでくると大部屋)

とても、きれいだ。

そして、何よりすばらしいのは、

布団が羽毛布団!

ロケーションもいい。

目の前には、峰の松目が見える。

さらに、お風呂もある。

(石鹸は使えないよ)

トイレは水洗。洗面所もきれいだ。

山小屋とは思えないほど充実している。

夕食まで、外のベンチでゆっくりと過ごす。

(寝てます)

夕日に染まる森。そして硫黄岳。

夜も更けてくると寒い。

暖炉がありがたい。

素泊まりなので、夕食は自炊。

 

私は頭痛が始まる。やはり始まったか。

ここは、標高2,330m。どうも2,000mを越えると

調子が悪くなる。薬を飲んで様子を見る。

明日、具合が悪いようなら、登らずに下山する

ことを約束させられる。

 

アンヌは、20:00に就寝。(早!)

私はなかなか寝付けず、一人夜に残される。

 

翌朝、6:30。

頭痛はしない。

よし、これなら大丈夫だ。

峰の松目の稜線に向かう。

深い森のなかといった感じ。

森林浴を楽しみながらゆっくり登る。

赤岩ノ頭への分岐を右方向へ進む。

日が高くなってくると、

だんだん森が明るくなってくる。

峰の松目への分岐に到着。

分岐を左方向へ。

赤岩ノ頭までの尾根道を進む。

なかなかいい尾根だ。

やっぱり八ヶ岳はすばらしい。

踏み跡も八ヶ岳。

明瞭な道になっている。

さすがの私も、これなら迷わない。

やがて、右手に阿弥陀岳、

そして、八ヶ岳の主峰、赤岳が見えてくる。

開けたところにでると

そこはハイマツ帯だ。

これから向かう赤岩ノ頭、そして硫黄岳。

振り返えると、そこは峰の松目。

左方向には根石岳。

その向こうには、天狗岳が見える。

 

遠くには雲海も見える。アンヌ隊員いわく

「お風呂みたい!」

(そりゃねぇだろ!)

赤岩ノ頭の分岐に到着。

標高2,656m。ここまで具合は良い。

どうやら、高山病は大丈夫だ。

さぁ、いよいよ今回の目的地

硫黄岳に登る。

 

山頂まで気分が悪くならなければ

今日の探検は成功だ。

息切れすると、頭痛が始まるかもしれない。

慎重にゆっくりと登っていく。

山頂近くまでくると、

岩場が見えてくる。

岩場とはいえ、危険なところもなく

山頂まで安心して登って行ける。

硫黄岳の山頂に到着。

ここは標高2,760m。我が隊の最高峰だ。

よっしゃ!

高山病を克服したぞ(本当か?!)

 

すごいぞ、マイナールート探検隊!

山頂は強い風が吹いている。

吹いているというより、吹き荒れている感じ。

まっすぐ立っているのが困難なほど。

風に向かって斜めに立っているひと続出。

(脚色あり!)

硫黄岳の東側は、爆裂火口。

スッパリと切れた崖だ。

ロープが張ってあり、

近づくな危険!看板もある。

あまりに風が強いので、写真もそこそこに

すぐに下山開始。夏沢峠に向う。

風の強さは写真に映らないが、

こんなに強い風は、かつて経験がない。

 

時折、突風が吹く。

そのたびに体がもっていかれそうになる。

あーっと、アンヌが転倒。

 

「ちょっと、ザックを引っ張らないでよ!」

と、ず〜っと後ろにいる私に叫ぶ。

(オイオイ…)

稜線には大きなケルンがいくつもある。

何のためのケルンか分からなかったが、

これはきっと風よけの休憩所に

違いない!

なかなかいいロケーションなのだ。

しかし、楽しんでいる余裕はない。

とっとと下山する。

 

下っても下っても

一向に風は弱くならない。

夏沢峠からは、次々と人が登ってくる。

ほとんどの人がレインウェアを着て

頭にはフードを被っている。

 

雨だけでなく、強風にもレインウエア。

丹沢ではありえない常識だ。

ここで、アンヌ隊員がお腹が減ったという。

この状況で食べられるわけないやろ!

私は大いに憤慨し、言い放った。

「もう少しだから我慢しようね」

夏沢峠にある山小屋が見える。

あそこまで下れば森の中。

風を避けられるだろう。

こうして夏沢峠、やまびこ荘に到着。

岩陰に隠れて、おにぎりタイム。

そして、オーレン小屋まで

深い森の中、登山道を下っていく。

風はまったく感じられない。

 

すれ違う登山者に「山頂はすごい風ですよ」

と教えたくなる。(余計なお世話です)

オーレン小屋に到着。

まだ、お昼前なので少しのんびりして

桜平の駐車場に向かう。

こうしてマイナー探検1号に到着。

すばらしい探検だった。

 

あとがき

帰りの夏沢鉱泉の「掲示板」に風の注意が書いてあった。

 

硫黄岳の山荘で、風速15m。ということは、硫黄岳の山頂は

もっと強い風が吹いていたのか。

 

気象庁の定める風速の目安では、

風速10m〜15m:傘がさせない。樹木全体が揺れる。(スカートがまくれる)

風速15m〜20m:転倒する。小枝が折れる。(ヅラが飛ばされる)

とある。

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