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矢駄沢を探求せよ。勇気ある撤退(2)

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F1、10m、ほぼ直瀑だ。とても越えられない。

意気込んできた割には、あきらめが早い。

(10:02)

 

高い滝は巻くのも大変だ。

右岸(左側)を登っていく。

 

続いて、F2、10mだ。

これも越えられない。

せっかくなので、水浴びをすることにする。

 

フルハシ隊員は、ここで修行を始める。

身を清め、心を引き締める。

 

さぁ、気合いが入った。

わお、大胆な登り。(本当か)

 

F3。右から登れそうだが、

水量が多く、なんとも危険だ。

雨が強く降り始めた。(10:20)

キリヤマ隊長よりフルハシ隊員に指示。

「ここは大きく巻くぞ」

「ラジャー!」

 

指南書で巻き道を確認する。

しかし、その巻き道もかなり危険だ。

 

フルハシ隊員が先に挑む。

だが、この巻き道を選んだことを

後でキリヤマは後悔することになる。

 

かなり高いところまで登っていく。

 

左岸をへつりながら、進んでいく。

 

下にはF3の落ち口が見えているのだが、

先に進めなくなった。まずい。

ロープを掛ける岩もない、木もない。沢に降りられない。

しばらく考えていたら、体が冷えてきた。

ぶるる、早く行動しないと。

 

登ってきたルートは降りることができない。

これは、典型的な遭難パターンだ。完全にハマった。

(10:56)

 

「いよいよ冒険らしくなってきたな、フルハシ」

「それは状況をつかめている言葉とは思えないな」

「オレを信じろ」

「まだ死にたくない」

こんなところで、フルハシ隊員と友情をあたためている暇はない。

残念だが今日はこれ以上進めない。

 

残された道はひとつ。

このまま沢をはなれて、斜面を登っていく。

勇気ある撤退。ゆくぞ!、マイナールート探検隊。

(11:16)

 

滝を越えるときに使うドライバーがある。

こいつを使って急な斜面を登ることにする。

 

険しい山肌を登り始める。

足元が崩れやすく、非常に危険だ。

草の根、木の枝、つかまれるものは

何でもつかまって登っていく。

 

フルハシ、へたる。

 

キリヤマ、楽しい。

 

がんばれ、フルハシ隊員。

 

薄暗い中にもかすかに道が付いているのが見える。

おそらく、何かの管理道だろう。

こいつに従って進めばきっと林道に出られる。

 

思った通り、林道に到着。(11:51)

「すばらしい冒険だったなぁ、フルハシよ」

「登り続ければどこかに着くに決まってる」

「ホメているように聞こえないぞ」

「生きているのが不思議だ」

 

林道を下ることにする。

霧が深い。

 

先にフルハシ隊員が歩いているのだが、

何にも見えない。

 

矢駄尾根の道しるべがある。

(12:49)

 

矢駄尾根を使って

 

神之川ヒュッテ近くの林道に出る。

(13:30)

 

あとはてくてく歩いて

 

マイナー3号に到着

(13:38)

 

感想:

夏の暑い時期でも雨が降っていると沢は冷える。豪快にシャワークライミングを楽しみたければ、やはり晴れの日の方がいい。

最後の滝F3は、もう少し水量が少なければ問題なく登れたはずだ。それと、晴れていたら気持ちもぐっとちがって登れたかもしれない。

精神的なものもかなり影響するようだ。

なお、この日、私はヒルに42か所刺された。詳しいレポートは下記を見てほしい。

http://blog.zaq.ne.jp/kiriyama/article/45/

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