悪い遊びをしよう、悪沢で

 

2013年8月17日(土) 

大滝橋 〜 悪沢 〜 悪沢ノ頭 〜 大滝橋

桐山隊長、アンヌ隊員。

 

悪沢はその名の通り、悪い沢だ。

そこで、今回は悪事をはたらくことにする。

桐山の考えた、悪いこととは?

 

 

 

大滝橋バス停から林道を少し入ったところに

マイナー探検1号を駐車。(8:00)

県道を約20分歩いて、悪沢の出合いに到着。

沢に入るとすぐにF1が見えてくる。

右岸にある作業道を通って、

F1からF4までは、巻いてしまう。

作業道は、F4の手前で沢を渡る。

この日は、水量が少ないので

ここまで登山靴で来た。

 

F4の上に到着すると、沢シューズに履き替える。

ここから沢歩きだ。

 

小さな滝をいくつも越えて行く。

悪沢には、全部で27の滝がある。

簡単に登れない滝も多く、もう少し増水していたら

難しい登攀になる滝が多くなるだろう。

最初のゴルジュを越えると、

沢は、右にカーブしている。

その先には、本日の核心F5(この写真は、今年7月の撮影)。

 

今日は、悪い遊びをしにきた。

F5は通常、右側の巻き道で越える。

しかし、滝の右側の壁にハーケンが残っており、

これを上手く利用すれば、滝を登ることもできる。

 

ところが、最初のハーケンが高い位置にあるため

ハーケンに到達する前に滑落すると、とても危険だ。

そこで、下部にハーケンを追加する。

これが今回の悪い遊びだ。

 

どうして、これが悪い遊びなのか。

我が隊は、ハーケンを打ちながらロープを

張っていくランニングビレーの経験がない。

これはとても危険だ。したがって、初心者の

我が隊にとっては、とても危険な遊び、悪い遊びなのだ。

そうさ、ここは悪沢だ。その名に恥じない、

悪い遊びをしようじゃないか!

 

まず、少しだけ登って、最初のハーケンを打ち込む。

通常、ハーケンはハンマーで打つとき、

ハーケンを打つ音がだんだん高く、鋭い音になってくる。

(コンコンコン → キンキンキンという音)

これをハーケンが「歌う」というが、

この滝は岩がもろく、ハーケンが歌わない。

しかも、ハーケンがアゴ(根本)まで入らない。

こんなハーケンを使うのは、とても危険だ。

そのハーケンを使って登るぞ〜。ワイルドだろ〜!?

 

次に、別のところ数箇所にハーケンを打つ。

しかし、いくら悪行三昧をしても、どれもきちんと入らない。

1時間ほどかけて、残置のハーケンまで登るが、

ここで、ロープでビレイ(確保)をしているアンヌ隊員が、

寒がりはじめる。

 

しょうがない。今日の道にそむいた悪行は、ここまで。

自分で打ったハーケンは回収。また、次回遊ぼう。

 

こうして滝の右から高巻く。

巻き道のフィックスロープはしっかりしているが、

そのロープに手が届くところまで登るときが、とても怖い。

このロープは、最後に使った人が

次の人がロープまで届きやすいように、

ロープを下ろしておかなければならない。

しかし、残念ながら、このときは上の方に巻き上げてあった。

(もしかしたら、最後に登ったのは、前回登ったアンヌ隊員か??)

巻き道のフィックスロープを使って、F5の落ち口に立つ。

 

落ち口付近にある支点は、ハーケンで2箇所。

ハーケンはしっかり入っているが、フィックスロープに

つながっているロープが、頼りない。経年劣化が激しい。

ハーケンとフィックスロープを使って、

懸垂下降のロープを設置する。

ロープは、30メートル。

ロープを折り返して使い、スリングを足して、

ぎりぎり下まで届く。

こうして、懸垂下降開始。

 

この後、アンヌ隊員のビレイで滝を登攀。

ロープの流れにしたがって水流沿いに登れば安全だが、

水流沿いにはホールドがない。

 

滝の上部は、ロープの流れと登攀ルートが

離れており、ランナウトして、苔の生えた右側を登る。

これも、悪い遊びだ。

(もしもフォールした場合、振り子のように振られる)

 

アンヌ隊員は、安全を考慮して、巻き道で登る。

登り終えた後に、フィックスロープを下に

投げておく。

 

さぁ、本日の悪い遊びは、ここまで。

ハーケンが効いていないのに登ったぞ〜。

ランナウトして登ったぞ〜。

ワイルドだろう〜。

この先は、滝をひたすら登っていく。

水量が少なく、ヌメッているところが多い。

ロープを出すなどして、いつもよりも注意して登る。

ところが、順調に登ってきた我が隊に、

ここで、大きな危険が!

なんと私は、滝の途中、登るに登れず、

下ることもできない状態になる。

上方向にホールドがまったくない。

下りようとしても、足のかかる位置がわからない。

動けなくなってしまった。(いわゆる、セミになる)

 

下は、岩がゴロゴロした沢床。高さはたったの2mのところ。

たとえ2mでも滑落すれば、確実に捻挫、もしくは骨折だ。

このとき私は、左足一本で体重を支えている状態で硬直!

「おりたい! 足どこ!? 足どこ!?」

「右足のすぐ下に岩があるわ」

「わからない!なんとかしてくれ!」

「だから、ここよ(アンヌが私の右足をもって無理に下ろす)」

ぎゃー!! やめろ!! こわい!!

 

経験したことのない方にとっては、不思議かもしれないが

クライムダウンで足場が見つからないときは、とても怖い。

誰かに足を持って下げられると、もっと怖い。

 

それでもなんとか、アンヌに足場を教わりながら、

無事に下ることができた。

 

この後、アンヌ隊員に、隊長は冷静さに欠けていると言われ、

経験と判断力に欠けていると言われ、常識に欠けると言われ、

新しいスカートとクツを買えと言われる。

 

私は過去に何度もクライミング中に、冷静さを失い、

危険な目にあってきた。そのつど反省してきたのだが、

「三つ子の魂、百までも」といわれるとおり、百歳になれば

治るだろう。

 

こうして、悪沢の最後の滝に到着。ここは涸れ滝だ。

 

巻き道は左にあり、落ち口付近にある立ち木が支点になる。

懸垂下降で下ってから、登るとなかなか面白い。

簡単なスラブだが、ちょっとテクニカルだ。

 

乾いている岩なら 5.6程度のルートで、初級者向けだが

濡れているので、5.7にレベルアップしている。

さらに、沢シューズでは滑りやすいため 5.8にアップ、

頼りない桐山のビレイが怖く、5.9のレベルに上がっている。

 

こうして、この滝を楽しんだ後は、支尾根に乗る。

 

稜線に到着。(14:20)

この夏、悪沢にまた来るだろう。

 

あとがき

悪沢は、いい沢だ。昨年までは、マスキ嵐沢ばかり行っていたが、

今年は、悪沢に通うだろう。いつか、ベテランの方の指導で

F2にもチャレンジしたい。

 

探検リストに戻る

このページのTOPへ