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F6の誘惑。鬼石沢の本流を探せ

大滝橋 〜 一軒家避難小屋 〜 鬼石沢 〜 畦ヶ丸 〜 大滝峠上 〜 大滝橋

2011年 9月10日(土)、天気:晴れ

行動時間 8:50〜17:00( 8 h 10 min )

探検メンバー : キリヤマ隊長、アンヌ隊員

 

鬼石沢は、登攀可能な滝が多く、マスキ嵐沢についで、

沢屋には、とても人気のある沢だ。

この日の鬼石沢は、増水のため、登攀に困難を極める。

そして、鬼石沢を進んで行くと、ガイドブックの説明と

情報が一致しないところが多々ある。

 

支流から入ってくる水の流れが激しい。

どこかで間違えて、支流に入ってしまったのだろうか。

鬼石沢は、地形が複雑で、現在地がつかみにくい。

水に濡れたガイドブックのコピーが、だんだん読めなくなっていく。

地形図を読みつつ、本流を探るキリヤマ。

はたして、我が隊は本流を進んでいるのか。


 

またしても、大転倒のキリヤマ

大滝橋バス停から、林道を進み、

ゲートの先にある駐車スペースに

マイナー探検1号を止める。(08:50)

一軒家避難小屋まで、東海自然歩道を登る。

しばらく進むと、わたしは落ちている枝に足を取られ、

漫画のように、バッターンと倒れる。

 

身体全体を激しく地面に打ち付けた。そこには、

わたしの身体がアタックするのに、充分な岩がたくさん露出していた。

幸い、怪我はしなかったが、痛みのすべてを、

右足のスネが引き受けてくれた。世に言う弁慶の泣き所。

あまりの痛さに、身体のシステムが機能せず、立ち上がることができない。

「隊長、大丈夫?」

「うーん、ダメだ。しばらくじっとしている」

( ← 痛みに苦しむキリヤマ )

 

こうして、しばらくフリーズしていると、なんと後ろから

トレイルランナーが心配そうに見ている。

いつの間に立っていたのだろうか。(幻覚かもしれない)

わたしの倒れているところは、カーブを曲がった先だ。

彼は走っていると、突然目の前に倒れているわたしを見たことになる。

 

彼の表情までは見えないが、

「こんなところで腕立て伏せをしている」と思っていないことは明らかだ。

そこで、アンヌ隊員が明るく

「大丈夫です、ちょっと転んだだけです」

(いや、かなり痛いのだが…)

彼はきっと、病気で倒れこんだ上品な紳士だ、と

心配してくださったのだろう。アンヌ隊員の話を聞き、

安心してわたしの横を通り過ぎて行くランナー。

とても恥ずかしいが、痛くて声が出ず、何も言えなかった。

(先月に自転車で大転倒したときよりずっと痛かった)

 

痛みがひいたので、歩き始める。

大がかりな橋を通過。

わたしは、これを橋の芸術と呼んでいる。

歩き始めてから50分ほどで

一軒家避難小屋に到着。

ここで、沢支度と補給をとる。

鬼石沢に沿って、管理道が続いている。

この管理道は、権現山の方に向かう道だ。

(探検記No.46:権現山への管理道を見つけろ

 

さぁ、鬼石沢を探検だ。

行くぞマイナールート探検隊。

 

まずは、管理道に沿って、

堰堤を越え、沢に入る。

増水のため、水の流れが速いような気がする。

沢登りは、増水するとレベルがぐっと高くなることが多い。

今日は大丈夫だろうか。

まずは、F2 に到着。(F1は雨棚)

すばらしい滝っぷりだ。

滝に打たれると、爽快な気分だ。

日常のつまらない悩みは、滝から落ちる水に流してもらう。

ついでに、わたしの借金も流して欲しい。

(わたしに借金をしている人は、流さないで欲しい)

さらに、滝の真下に立つと、水流の風が吹く。

さわやかな風に吹かれて、胸がすうっとなる。

F2 は、右側(左岸)の斜面を登る。

ホールドが豊富で、難なく登ることができる。

斜面途中から、流れを撮影。

今日は天気がいいので、シブキの合間に光が差し込み、

キラキラと輝いている。

 

F2 の上には、F3 がある。

ガイドブックには、右側(左岸)から巻くと書いてあるが、

右はちょっと危険だ。左から巻くことにする。

少し下流から、左斜面を登って行く。

すぐに、管理道に出る。

やがて管理道は、沢の方に向い、

おのずと沢に戻れる。

 

しばらくは、小滝とナメ滝が続き、

堰堤を越える。

 

静かなところにでた。

「お腹がすいて調子が出ないわ、ここでおにぎりを食べましょう」

「え? さっき食べたばかりだよ」

「あんなもの、とっくにどこかに行ったわ

鬼石岩は鬼の比喩なのか、大きなことの比喩なのか

さらに進むと、大岩がある。

たしか、ここを管理道が横切っているはずだ。

以前にここに来たときより、

管理道はさらに分かりにくくなっている。

沢には、さまざまなものが落ちている。

流木、ドラム缶、シカの骨、一升瓶。

ジャンルを問わず、いろいろなものが落ちている。

これは、なに?

F4 に到着。うーん、水流の中を登りたいなぁ。

ロープ無しのフリーでは、ちょっと怖いかな。

ここはいったん巻いて、滝の上に出る。

そして、トップロープでいったん下り、

それから、あらためて登り直す。

これなら安全だ。

 

この後はしばらく、沢を歩いて行く。

水量が多いので、ナメ滝が楽しい。

沢がいったん左にカーブすると、その先にF5 がある。(12:00)

思ったよりも大きな岩だ。とくに鬼の形はしていない。

ここが鬼石沢の核心部だろう。

ここは、水流沿いに登る。

ホールドがあまりないので、足を滑らさないよう、

ゆっくり登って行く。

平らな岩の上で、記念撮影。

ここは、記念撮影のためにあるような岩だ。

多くの探検家がここで、写真撮影をしたに違いない。

平らな岩の裏側には、大きな岩がもたれかかって岩屋になっている。

矢印が書いてあるので、この中を進むらしい。

 

岩屋の出口が、ちょっと登りにくいので

岩屋の右側から登る。

上部にホールドが少ない滝だ。

アンヌ隊員が登るときは、補助ロープで確保する。

F5 の上は、流れが細くなり、水が勢いよく流れている。

すがすがしい感じのするところだ。

F6を探せ。道迷いを誘発するな

このあたりは、地形がとても複雑だ。

地形図を見ても、現在地がはっきりつかめない。

沢登りは、流れに沿って登れば、めったに迷うことがない。

地図を頻繁に見ると、例え防水対策をしても、地図が濡れてしまう。

そのため、地図を見なくなってしまうことが多い。

しかし、そのことがこの後、大きな失敗につながることになる。

分岐に到着。(12:30)

左俣は水量が明らかに少ない。右俣で正解だろう。

迷わず右俣に進むと、小さな滝がある。

これは簡単に越えられる。

その上の滝は、かなり大きい。これが、F6 かな?

その先に、堰堤が見える。

あれ? ガイドブックには、F6 5m 、F7 5mとある。

大きな石がのっている堰堤もあるはずだが…。

どうもヘンだ。やっぱり、さっきの支流だと思った左俣が

正解だったのか。

この滝は、登ってしまったら下ることはできないだろう。

左俣に戻るなら、今しかチャンスがない。

 

と、そのとき、下流を単独の探検家がいるのが見える。

彼は分岐をどちらに進むのか、悩んでいるようだ。

もし、彼が我が隊を見かけたら、こっちが正解だと勘違いして

こちらに来てしまうかもしれない。

「彼に見られるとまずい、隠れろ!」

 

ここで、あらためて地形図とガイドブックを確認する。

明らかに多い水量、地形。うーん、わからん。

ガイドブックは、1995年の記録だ。今から16年前とは状況も違っただろう。

 

 

 

よし、こっちが本流と考えよう。ただし、間違えているといけないので、

彼に絶対に見つからないように、注意して登ろう。

 

 

 

幸い右側の斜面は、彼から死角になっている。おそらく、見つからずに

登れるはずだ。こうして、アンヌ隊員を確保しながら斜面を登る。

 

滝の落ち口の横をトラバース。こうして、滝の上に立つ。

 

ところがなんと、滝の上は、彼からバッチリ見える位置だった。

あちゃー! 見つかってしまった。

案の定、我が隊を見た彼は、こっちに向かって歩いてくる。

 

もし、彼の立場だったら、わたしも同じ行動を取るだろうなぁ。

もう、こうなったらしょうがない。

キリヤマを信じてもらうしかない。ついてこい!

滝の上の堰堤を越える。

これがガイドにある、大きな石がのっている堰堤だろうか。

大きな岩は、流されてしまったのか?

よくわからないが、今日は水量が豊富なので、

たとえ本流でなくても、充分に楽しめる。

このまま沢登りを楽しむことにする。

 

後ろから来ているはずの彼も、

きっとキリヤマに感謝しているはずだ。

 

次は、小滝とはいえ、ホールドがなく、

左から巻く。

次の小滝は、どうしても登りたくて、フリーで登ってみるが、

すぐに登れなくなり、つまってしまう。

滝を巻いて先に登ったアンヌ隊員に、お助けロープを出してもらう。

わたしの登攀は、まだまだ。修行が足りない。

わたしは自信を持っていうが、名クライマーにはなれないだろう。

しかし老クライマーにはなれるのではないだろうか。

 

次々に滝を越えて行く。

 

どの滝も、ロープを出す必要がなく、

快適に登っていける。

 

流木が滝の真ん中に立っていて、

それをハシゴのようにして登れる滝もある。

 

これは、ちょっと無理か。巻こう。

その次は、小さなチョックストーン。

こうして、沢の水がしだいに涸れてくると、

岩がもろくなって、危険なところになる。

 

あらためて地形図を見てみると、ここは本流ではなく、

支流の上部らしい。やはり先ほどの分岐は左俣が正解だったのか。

 

そろそろ沢を離れよう。

左側に見える尾根に向かって斜面を登る。(14:50)

先ほど、間違った支流へ誘われた彼が、沢の下流に見える。

心の中で、深く陳謝し、彼の幸せを祈る。

尾根に出ると、そこはヤブ尾根だ。

探検家の中には、ヤブ尾根を非常に好む者もいるという。

この程度のヤブなら、探検家として愛すべきヤブだろう。

 

こうして、登山道に到着。(15:00)

畦ヶ丸避難小屋から少し大滝峠上に向かったところに出た。

すごいぞ、マイナールート探検隊!

 

避難小屋で休憩して、下山をする。

まずは、大滝峠上を左折。(15:40)

 

増水のため、ステタロー沢にかかる丸太橋は、

水につかっているところが多い。

こうして、マイナー探検1号に帰還する。(17:00)

本流を間違えたおかげで、支流を楽しめた、と

前向きに考えよう。

 

すばらしい探検に祝福を。

 

あとがき

今回のことで学んだことは、

・先行する人を信じてはいけない。とくにキリヤマを信じてはいけない。

・間違えは誰にでもある。ゆえにキリヤマも間違える。ゆえにキリヤマは二枚目だ。

・探検の半分はトラブルで、 あとの半分はそれを乗り越えるためにある。

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